監修者:大隅識文
株式会社IPPO共同創業者/取締役
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オフィスを拡張する場合、いくつか方法があります。
掛かる費用や手間、負担を考え検討しましょう。
本記事では、オフィスの拡張方法と、それぞれのメリットデメリットを解説しています。
この記事の目次
オフィスの増床移転とは
オフィスの増床移転(ぞうしょういてん)とは、本来以下の意味があります。
- 病院や診療所で、入院患者用の病床を増やすこと。
- 百貨店やスーパーなどの商店で、売り場面積を増やすこと
不動産業界では、(2)に近い意味合いでオフィス・事務所の床面積を増やすことを増床移転と言います。
具体的な方法としては、同一建物内の別区画を借りる内部増床や別建物で部屋を借りる分室増床、現オフィスより床面積が大きな区画へのオフィス移転などです。
オフィスの増床移転を検討する状況
増床は事業拡大による利益の増加に伴った節税対策や、人員増加に当たって手狭になったことで検討することが多いです。
オフィス移転による増床の場合は、それに加え周辺環境の改善が目的の場合もあります。
オフィスの増床移転のメリット
一時的なコスト面の負担を考えると、移転をするより内部増床や分室増床の方が費用を削減できる可能性が高いです。
移転をする場合は、退去費用、入居費用が掛かる他、諸々の手続きで時間や工数も掛かります。
しかし、長期的に見ると「内部増床や分室増床の方が安く済む」と一概には言えません。
増床したものの、すぐに移転をすることになってしまった場合などは、二重でコストが必要です。事業計画や採用計画を加味した上で判断しましょう。
オフィスの増床移転の種類
オフィスを拡張するためには、4つの方法があります。
増床移転の種類 | ポイント |
---|---|
内部増床 | 同じビル内で追加賃借する |
分室増床 | 周辺のビルで追加賃借する |
オフィス移転による増床 | 今より広いビルを新たに賃借する |
オフィスの内部増床・分室増床
内部増床とは、現在賃借しているオフィス・事務所を残し、同じビル内に追加で賃借することを言います。
分室増床とは、現在賃借しているオフィス・事務所を残し、周辺にある別のビルに追加で賃借することを言います。
内部増床・分室増床のメリット
内部増床の場合、費用を抑えられる可能性が高いです。
元々あったオフィス・事務所を本社として、追加で賃借したオフィス・事務所を新規事業部や開発部署を置けば、告知は不要なケースが多いです。
移転そのものに掛かる費用も、仲介会社や引越し業者を利用したとしても通常のオフィス移転よりは安く済みます。
内部増床の場合、ビルオーナーが同じため審査の時間短縮ができる可能性があることに加えて、オーナーへの交渉次第で多少のディスカウントや、フリーレントの付与など対応してくれる可能性があるため、交渉してみましょう。
また、内部増床を検討する際は、オーナーから同ビルの区画の解約が出た時点で市場に情報を公開するよりも先に同ビルに入居するテナントに情報公開されるケースがあるため、定期的に確認しましょう。
大掛かりな引越しや通勤経路の変更がないため、メンバーの負担がない増床方法と言えます。
内部増床・分室増床のデメリット
タイミング良く同じビル内で空いている区画があることは稀です。
また、同じビル内でもフロアが分かれるとコミュニケーション(連絡や報告が遅くなる)がとりにくくなってしまいます。
さらに、フロアが分かれる場合、共益費がそれぞれの区画に掛かってくるため、総賃料が高くなってしまう可能性があります。
分室増床する場合は、できる限り現在のオフィス・事務所と近い場所を選びましょう。
オフィス移転による増床
オフィス移転による増床とは、現在のオフィス・事務所を解約し、新たに床面積が大きなオフィス・事務所を賃借することをいいます。
オフィス移転による増床でのメリット
オフィス移転の場合、立地や広さを自由に選ぶことができます。
元々の広さに対して稼働人数が見合っていなかったのであれば、業務効率が改善され、生産性向上に繋がります。
オフィス・事務所の内装やレイアウト、外観など環境が変わることによってメンバーの気分転換にもなります。
対外的には、広いオフィスや立地条件がいいオフィスへ移転することにより、取引先に業績好調のアピールをすることもできます。
また、採用計画がある場合は今の稼働人数+採用予定人数が入る広さの移転先を選ぶこともできます。
余裕のある広いオフィス・事務所に移転するということは、以前よりランニングコストが上がるケースが多いため、予算策定の段階で検討が必要です。
オフィス移転による増床でのデメリット
オフィス移転をする場合は、内部増床・分室増床よりも多くの費用と時間が掛かるケースがあります。
現在のオフィス・事務所の退去手続きを行い、新オフィス・事務所の条件選定から物件選定、それに当たって内見などの工数が発生します。
オフィスが決まったら内装工事の手配や電話・インターネット回線の準備、引越し業者の手配、各種届出など膨大なタスク量になります。
また、最寄り駅が変わる場合はメンバーにとって負担になるだけでなく、全社員分の定期券や交通費清算の変更対応が必要です。
オフィスの増床計画で押さえるべきポイント
増床をする場合、まずは目的を明確にする必要があります。目的が明確になっていないと、適切な手法も物件も選ぶことができません。
目的を明確にした後、事業計画とも合わせて計画立案します。
オフィス増床は、レイアウトや働き方、コストなど様々な面で見直しをするチャンスです。
現在のオフィスの課題点の洗い出しも一緒に行うといいでしょう。
内部増床の場合は、貸主(オーナー)や管理会社に直接相談するか、仲介会社に依頼します。
他のビルへの移転を検討していることも含めて相談することでフリーレントの追加などの好条件を提示してもらえる場合があります。
その後、内装工事会社や各業者の選定や手配をしましょう。
事業計画・採用計画とマッチしているか
売上の見込み、採用による社員の増加、事業拡大による作業スペース不足など会社の状況は常に変化します。
したがって、増床を考えるタイミングも重要です。
例えば、採用人数に変更があった場合、その人数が稼働しても問題ない広さなのかどうかを含めて検討する必要があります。
当初の予定から採用人数を減らした場合は、増床時期を後ろ倒しにすることで無駄な支出を抑えることができます。
計画を立てるときは、会社の状況を見つつ段階的に内容を詰めていきましょう。
利便性や周辺環境に問題はないか
オフィス・事務所の増床を検討する際、現在のオフィス・事務所での課題点を洗い出しましょう。
駅からの距離や交通アクセスなどの利便性、コンビニや郵便局、銀行、食事が出来るお店などが不足していないかという点で問題があるのであれば、内部増床では解決できない可能性があります。
また、インターネット回線の電波状況も重要です。
ビル周辺の電波状況によって、インターネット回線のプランや業者の見直しが必要になるかもしれません。
オフィスの増床コストの把握
どの手法で増床をしても、確実にコストは掛かります。大まかな内訳は、賃料や内装費用、設備費用、什器・備品費用、引越し費用などです。
手法によって金額が大きく異なるため、始めに概算費用を算出しましょう。
また、居抜きによるオフィス移転は原状回復費用や什器購入費用の削減に効果的です。増床のほか、居抜きによるオフィス移転も検討してみましょう。
オフィスのセキュリティ体制の強化
増床する場合、今までより広い面積のオフィス・事務所や、多くの人員のセキュリティ面をカバーしなくてはいけません。
- エントランスに防犯カメラや入退室管理システムを導入する
- シュレッダーの使用を徹底する
- 契約関係の書類や社外秘の重要書類などは鍵がかかるフォルダや引き出しに収納する
内部増床や分室増床の場合、人の行き来が多くなる可能性があります。
出入り口をオープンな状態にしてしまうと、外部の人間に侵入されてしまう場合があります。
社員の身の安全や、機密情報を守るためにセキュリティ対策は厳重に行わなければいけません。
その反面、セキュリティを強度にするとコストが高くなる傾向にあります。
部屋や場所毎にセキュリティの強度にメリハリをつけることで対策しましょう。
オフィスの増床とオフィス移転はどっちがいい?徹底比較!
内部増床や分室増床は、オフィス移転に比べ費用を抑えられる可能性があります。
オフィス移転による増床は、現状の課題解決に繋げられるメリットがあります。何を重視するかで、どの手法を選ぶかが変わります。
費用での比較
内部増床 | 内装工事費用、什器・備品・家具追加購入費用、追加で賃借した区画の賃料・初期費用 |
分室増床 | 内装工事費様、什器・備品・家具追加購入費用、追加で賃借したビルの賃料・初期費用 |
オフィス移転による増床 | 告知費用、退去費用、内装工事費様、什器・備品・家具追加購入費用、追加で賃借した区画の賃料・初期費用 |
費用面だけで見ると、オフィス移転による増床が一番コストが掛かるケースが多いです。
コミュニケーションの活性化での比較
内部増床や分室増床の場合、同じ執務内で働く時と比べると、コミュニケーションがとりにくくなる可能性があります。
内部増床の場合は隣の区画、分室増床の場合は隣のビルなど、できるだけ行き来しやすい環境を作りましょう。
また、ファミレス席やバーカウンター、ソファースペースなど、デスク以外のスペースを設けることによってコミュニケーションが取りやすいように工夫しましょう。
社員のモチベーションでの比較
内部増床の場合、内装の変化はありますがオフィスの場所自体は変わりません。
分室増床の場合も、大きなエリア変更をすることは稀です。
オフィス移転による増床の場合は、今までと全く違うエリアに行けるだけでなく、内装も完全にリセットされるため、新鮮な気持ちで働くことができ、モチベーションアップに繋がります。
さらに、今までより広いオフィス・事務所に移転することで、メンバーが会社の成長を実感できます。
優秀な人材の採用における比較
内部増床や分室増床の場合、どちらかのオフィス・事務所の内外観に年季が入っていたり、自身の関わる部署の関係で行き来することが多い場合は選考辞退に繋がる可能性があります。
オフィス移転による増床で、人が集まりやすいエリアや内外観が綺麗なオフィス・事務所に移転することで、採用に有利に働きます。
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監修者
株式会社IPPO 共同創業者 取締役 大隅識文
宅地建物取引士【東京都知事:第237969号】
中央大学卒業後、マスメディア向け制作会社に入社し経営にも携わる。その後不動産仲介会社に転職し、共同創業者として2018年株式会社IPPO(イッポ)を設立。シード・アーリー期のスタートアップ企業から上場企業までオフィス移転取引社数は500社以上、うち居抜きオフィス移転の取引実績は200社以上に達する。オーナーとの関係性も非常に良く、居抜きオフィス移転の実務を知り尽くした、きめ細かなサポートに、オーナー・顧客からの信頼も厚く、リピートが絶えない。
執筆者 ハイッテ編集部
株式会社IPPO全般のマーケティングを担っています。ハイッテの運用のほか、オフィス移転事例や賃料相場、オフィス調査なども行なっております。