監修者:大隅識文
株式会社IPPO共同創業者/取締役
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一般的な賃貸オフィスの移転は原状回復費用や内装工事費用が必要です。
前テナントの設備や家具を継承し、入居・退去する双方にとって大幅なコストダウンが実現可能な居抜きと、低コストで高品質な完成されたスペースが利用可能なセットアップ。
それぞれのメリットやデメリットを解説します。
この記事の目次
居抜きオフィスとは
居抜きオフィスとは、造作物やデスク・チェア・ロッカーなどの家具や内装を、全て引き継ぎ入居・退去できるオフィスです。
通常、賃貸オフィスを退去する場合、賃貸借契約書にて定める入居時の状態に戻す原状回復工事が必要です。
テナントにて設置した物があれば撤去し、必要があれば壁・床の貼り替えなど大規模な工事となり高額な請求も想定されます。
一方で居抜きの場合は、前テナントの造作物から設備や原状回復義務に至るまで次のテナントが継承するため、退去テナントは退去時に発生する費用、入居テナントは初期費用を大幅に削減可能な移転方法です。
特に、スタートアップ・ベンチャー企業は、事業成長に合わせて短期間で移転を繰り返す傾向があり、その度にコストを抑えることができます。
セットアップオフィスとの違いとは
最も大きな違いは、費用面と内装のカスタマイズ性にあります。
セットアップオフィスは、オーナー側にてデザインや工事を施し、業務に必要な家具や設備(インターネットや電気配線など)を提供するため、入居テナントはレイアウトを考える手間を削減でき、プロデザイナーが手がけたオフィスを利用できます。
中には会議室が造作された状態で執務室の家具がない状態のセットアップオフィスもあり、全ての内装・設備が揃ったセットアップオフィスよりも低コストの傾向にあります。
一方で、居抜きオフィスは、前テナントが利用していた状態を保持したまま引き継ぐことが可能な形態です。
つまり、必要な基本設備が整っていることが多く家具や設備を揃える支出を削減し、入居後すぐに業務を開始できます。
セットアップオフィスよりも低コストな傾向にあり、各工事の自由度も高く近年注目されている移転方法です。
セットアップオフィスとは、貸主側で既に内装工事を行い、会議室やオフィスの什器などを整えた状態にしている物件のこと。別名、「内装・什器付き物件」とも言います。
オフィスレイアウトを一から考えることをせずに入居することができます。
オフィス形態 | 居抜きオフィス | セットアップオフィス | ||
入退去 | 入居 | 退去 | 入居 | 退去 |
費用の削減 | ◎ | ◯ | ||
期間短縮 | ◯ | ◯ | ||
内装・家具 | 中古 | 新品 | ||
内装のカスタマイズ | ◯(オフィス物件による) | △ | ||
現状回復工事義務 | あり オフィス物件による | なし 後継テナントに継承 | あり(オフィス物件による) | |
月々の賃料 | 相場に近いケースが多い | 相場より割高なケースが多い |
居抜きオフィスに入居するメリット・デメリット
居抜き移転では、原状回復・内装工事を行う必要がなく、移転期間短縮や廃棄物の削減にも寄与し、様々なメリットがあります。
メリット
居抜きによる入居メリットは以下の3つです。
移転期間を短縮できる
オフィスや事務所を構築する場合、何もない状態からパーテーションや全体のレイアウト考案などに膨大な手間と時間を費やすことが想定されます。
居抜き移転の場合、各工事の工数が減ることから期間を数ヶ月単位で短縮することが可能で、移転タスクに割く時間を最低限に抑えることができます。
内装工事費用を削減できる
居抜きオフィスへの入居の際、前テナントが利用していた設備がある程度整っている場合、それらの購入・工事費を大幅に削減できます。
レイアウトをそのまま使える
通常の賃貸オフィスの移転フローでは、退去時に原状回復工事を行い入居時と同じ状態に戻すため、原状回復された賃貸オフィスに入居する場合は会議室やパーテーションなど設置する内装工事を行う必要があります。
一方、居抜きオフィスの場合、前テナントのレイアウトを引き継ぐことができます。
オフィス移転では、契約内容の把握に加えて、二重賃料などが発生しないようスケジュール調整が必要です。
株式会社IPPO(イッポ)では、オフィスの退去と入居を一貫してのサポートが可能です。
- 原状回復義務が免除
- SDGs(つくる責任、使う責任)への貢献
デメリット
居抜きによる入居デメリットは以下の3つです。
内装・什器などが中古品の場合がある
以前のテナントが使用していた内装や設備・家具を引き継ぐため、必ずしも状態がいいものばかりではありません。
必要に応じて自社の状況に合わせた改装工事を行う必要があります。
前テナントの原状回復義務も引き継がれる
居抜きで入居する場合、前テナントから原状回復義務も継承します。
つまり、造作物が多いほど高額になるため、事前に把握しておくことが重要です。
また、移転後のオフィス・事務所を居抜き退去することで、同様に原状回復義務も継承されます。居抜きでの退去も選択肢に捉えることで、コストを最小限に抑えた移転を実現できます。
入居日を指定される場合がある
原状回復業者や内装工事会社などの関連各社や全体のスケジュールから、入居日(入居期限日)を指定する場合があります。物件によって異なるため事前に確認しましょう。
居抜きオフィスとして退去するメリット・デメリット
居抜きオフィスに入居する場合のメリット・デメリットがわかったところで、居抜きオフィスとして退去するメリット・デメリットを紹介いたします。
メリット
居抜きによる退去メリットは以下の3つです。
退去費用を削減できる
居抜き退去の場合、什器の処分各工事を行う必要がないことから期間を数ヶ月単位で短縮することが可能で、移転タスクに割く時間を最低限に抑えることができます。
廃棄物削減でSDGsに貢献できる
通常、賃貸オフィスの移転で発生する原状回復工事では「入居時の状態に戻す工事」のため、新たに工事した内装や造作物は、仮に十分に使える綺麗な状態でも廃棄することとなります。
これに対し居抜きオフィスでは、前テナントの内装を保持した状態で引き継ぐことができる移転方法なので、廃棄物量が削減でき、結果としてSDGsに貢献することができます。
工数削減で事業に集中できる
居抜き移転の場合、各工事を行う必要がないことから期間を数ヶ月単位で短縮することが可能で、移転タスクに割く時間を最低限に抑えることができます。
オフィス移転では、契約内容の把握に加えて、二重賃料などが発生しないようスケジュール調整が必要です。
株式会社IPPO(イッポ)では、オフィスの退去と入居を一貫してのサポートが可能です。
- 原状回復義務が免除
- SDGs(つくる責任、使う責任)への貢献
デメリット
居抜きによる退去デメリットは以下の2つです。
居抜きでの募集期間が短い
6ヶ月前に解約通知を行った場合、おおよそ2ヶ月程度が居抜きオフィスの募集可能期間となります。
例えば、5月に募集を開始した場合、6月〜8月の3ヶ月間がメインの募集期間になります。
居抜き募集できる期間を把握するために、原状回復工事の見積りをしましょう。募集期間中に居抜き入居してくれる後継テナントが見つからなければ、原状回復をしなければならないため注意が必要です。
造作譲渡で後継テナントとトラブルになることがある
移転先へ持っていく家具や什器、残置する物を決めておく必要があります。
後継テナントが入居する際にトラブルを防止するためにも、何を譲渡するか明確にする造作譲渡契約書を結び、記載漏れがないかを入念に確認しましょう。
ハイッテby株式会社IPPOでは、オフィス移転担当者の9割がつまずく、実際にあった居抜きトラブル事例5選をわかりやすく紹介しています。無料ダウンロードできますのでぜひご参考ください。
居抜きオフィスの探し方
近年、スタートアップ・ベンチャー企業の間で居抜きによるオフィス・事務所移転がトレンドになっており、居抜きオフィス数も増加傾向にあります。
以下、居抜きオフィスの探し方を紹介いたします。
居抜きオフィスが向いている企業は?
居抜きオフィスは内装費用・什器などの購入費用を削減し、工事そのものがなくなることからスピーディな入居を可能にします。
市場に出回る居抜きオフィス・事務所物件は200坪以下の物件が多いことからも、スタートアップ・ベンチャー企業など身の周りの支出を抑え、事業投資を優先している企業に特におすすめです。
居抜きオフィス専門サイトで物件を探す
1つ目は居抜きオフィス移転専門のサイトで物件を探す方法です。
居抜きオフィスに特化する物件検索サイトは複数存在し、サイトにより物件数やエリアは様々です。
求める物件条件がある程度決まっている場合は複数サイトで条件検索することで、よりマッチした物件に出会うことができます。
また、社員数が30〜50名規模になると「会議室が空いていない」「集中できるスペースが欲しい」などの課題が目立ちやすくなり、条件に適合した物件に出会えるまで時間がかかる場合があります。
一方で少人数の場合、求める条件も少ないことが多く、居抜きオフィスとマッチしやすい傾向があります。
仲介会社に依頼する
2つ目はプロの仲介会社に依頼する方法です。
不動産情報は世間一般に公開されていないことが多く、不動産業界に関わりのない人が探すことは困難です。
エリアや必要な設備などを仲介会社に提示することで、適している物件の提案を受けられます。
また、居抜きオフィスの場合は、情報の公開範囲が通常の賃貸オフィスに比べて制限されていることがあるため、居抜きオフィスの仲介実績が豊富な仲介会社に依頼すると安心です。
居抜きで退去する方法
居抜きオフィスは入居するだけでなく、退去時にも大きなメリットを享受できる方法です。
居抜きで退去するためには、後継テナント(居抜きオフィスに入居する企業)を見つける必要があり、実際にどのように手順を踏めば良いかを紹介いたします。
居抜き移転サイトに物件を登録する
1つ目は居抜き移転の専門サイトに物件情報を登録する方法です。登録することで、後継テナント(入居したい企業)とマッチングする可能性が格段に高まります。
ただし、オーナーから居抜き退去の許可を得ていない場合、トラブルに繋がる可能性があることからも登録前にオーナーへ確認しましょう。
本記事ではハイッテへの物件登録方法を紹介します。
トップページ左側にある「居抜きで退去したい」から必要情報をご入力いただきましたら後日弊社よりご連絡させていただきます。
仲介業者に依頼する
2つ目は、仲介会社に依頼する方法です。前提として居抜き退去の場合、オーナーの許諾を得る必要があります。
仲介会社に依頼を出すことで、居抜き退去コンサルティングとして、許諾の取得や後継テナント探しを代行することも可能です。仲介会社により対応可否や内容が異なるため、依頼時は確認が必要です。
オフィス移転では、契約内容の把握に加えて、二重賃料などが発生しないようスケジュール調整が必要です。
株式会社IPPO(イッポ)では、オフィスの退去と入居を一貫してのサポートが可能です。
- 原状回復義務が免除
- SDGs(つくる責任、使う責任)への貢献
居抜きオフィスの注意点
居抜きは入居・退去の双方に大きなメリットがある移転方法ですが、考えられる注意点として、どのようなものがあるのかを解説いたします。
内装・什器の造作譲渡契約について
居抜き退去、入居それぞれの対応方法を確認しましょう。
居抜き退去テナントの対応
設備や家具を全て継承もしくは一部継承するかは後継テナントと協議の上、決定します。
例えば、「造作した会議室は残し、ロッカーやチェアといった什器は移転先に持っていく」というようなケースも考えられます。
お互いが気持ちよく取引するためにも、退去前に什器に傷や不具合は無いかよく確認し、特記事項があれば造作譲渡契約書に全て記載するようにしましょう。
なお、全て残置することで後継テナントが見つかりやすくなり、廃棄物を削減できるだけでなく原状回復費をかけずに退去できます。
居抜き入居テナントの対応
一方で入居テナント側は設備や什器にかかるイニシャルコストを削減でき、入居後すぐに稼働開始できるというメリットがあります。
前テナントの設備や家具を利用できることは大きなメリットとなる反面、設備の老朽化問題が常にあることを認識しなければなりません。
入居後に「エアコンが故障している」「家具に傷がある」などの問題が発覚するケースがあります。
居抜きオフィスへ入居することで初期費用を抑えることができても、修繕・改修に支払っては、居抜きのメリットが薄れてしまいます。
このようなアクシデントを避けるためには、入居前に継承する設備・家具を入念に確認しましょう。
工事期間を加味したスケジュールを引く
居抜きによる移転は通常の賃貸オフィスの移転スケジュールと少し異なる点があります。
居抜き退去テナントの対応
一般的にオフィスを退去する場合は原状回復義務が発生します。
居抜きオフィスとして退去する場合でも、後継テナントが見つからなかった場合に備えて原状回復工事を見据えたスケジュールを組む必要があります。
原状回復工事の見積りや打ち合わせなどに日数を要すため、余裕をもったスケジュールで手配しましょう。
- テナント内の間仕切りの撤去(ドアやガラスなども含む)
- 造作物の撤去
- 壁が壁紙の場合は全面張替、壁が塗装の場合は全面塗装
- 天井が壁紙の場合は全面張替、天井が塗装の場合は全面塗装
- 床がタイルカーペットの場合は全面張替、OAフロアの場合は高さ調整や破損は交換
- 照明(配線も含む)の撤去、回復、清掃、管球の交換
- 窓、ブラインドの回復、清掃
- 設備を移設や増設した場合は元に戻す(空調や火災報知器、スプリンクラーなど)
- 原状回復が終了した際のクリーニング、エアコンなどのクリーニングなど
居抜き入居テナントの対応
物件によっては、内装の老朽化・設備の入れ替えにより一部工事が必要になる場合があります。
内装工事期間や内容を加味したスケジューリングが大切です。
また、内装工事には3つの区分があり、それぞれの工事費負担元や工事できる範囲が異なるので確認しましょう。
A工事 | B工事 | C工事 | |
---|---|---|---|
事業者の選定 | オーナー | オーナー | テナント |
費用の負担 | テナント | ||
備考 | 共用部・建物構造に関わる工事に多い | 専有部の建物構造・設備・内装工事に多い | 建物全体の安全性に問題ない工事に多い |
インターネット回線を確認する(居抜き入居に必要な確認事項)
内装や空調や照明などの設備は入居後そのまま利用できる状態であることが大半ですが、インターネット回線や電話回線は撤去されている場合があります。
インターネット回線は使用開始までに契約後数ヶ月要することがあることからも、事前に契約手配を進めておくことでスムーズに移転を完了できます。
また、Wi-Fiは設置してあるが特定の場所にいる時に「届かない」「電波が弱い」といったケースが散見されます。入居後を見据えた準備をしましょう。
オフィスレイアウトを確認する(居抜き入居に必要な確認事項)
同じ規模・業種の企業の居抜きでも、事業特性や企業文化によって適している条件は異なります。
居抜きは前テナントの内装を引き継ぐため、入居後に変更すると造作費に加えて撤去費が発生してしまうので注意が必要です。
適している物件と出会うには、坪数やエリアだけではなく、企業文化・働き方にフィットする物件なのかを見極めることがポイントです。
良い物件はすぐに問い合わせる(居抜き入居に必要な確認事項)
居抜きオフィスは近年増加しているものの、需要と比べて物件数は多くはありません。
故に東京都の人気のエリアや設備が整っている物件はすぐに契約が決まってしまいます。
自社が求める条件や働く風景が想像できる物件に出会えた際には、できるだけ早めに下す決断が重要です。
そのためには、条件をしっかりと定めておくことや他物件を内見してオフィス移転のイメージを掴んでおくことも大切です。
東京都内おすすめのセットアップオフィス
東京都のおすすめセットアップオフィスをご紹介します。
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東京のセットアップオフィスは「ハイッテ」にご相談ください
ハイッテ by 株式会社IPPOは東京都内の人気ビジネスエリアである東京都中央区、港区、千代田区、渋谷区、新宿区におけるオフィス移転に強みを持ちます。
スタートアップ・ベンチャー企業の創業時のシード期、資金調達を完了したアーリー期、成長フェーズのミドル期のほか、従業員100人の中堅企業の東京都内のオフィス移転仲介に対して、豊富な知識と実績を有しています。
経営戦略に応じた、1年後、数年後、10年後を見据えた最適なオフィス移転提案が可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
監修者
株式会社IPPO 共同創業者 取締役 大隅識文
宅地建物取引士【東京都知事:第237969号】
中央大学卒業後、マスメディア向け制作会社に入社し経営にも携わる。その後不動産仲介会社に転職し、共同創業者として2018年株式会社IPPO(イッポ)を設立。シード・アーリー期のスタートアップ企業から上場企業までオフィス移転取引社数は500社以上、うち居抜きオフィス移転の取引実績は200社以上に達する。オーナーとの関係性も非常に良く、居抜きオフィス移転の実務を知り尽くした、きめ細かなサポートに、オーナー・顧客からの信頼も厚く、リピートが絶えない。
執筆者 ハイッテ編集部
株式会社IPPO全般のマーケティングを担っています。ハイッテの運用のほか、オフィス移転事例や賃料相場、オフィス調査なども行なっております。