
監修者:大隅識文
株式会社IPPO共同創業者/取締役
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居抜きオフィスへの移転では、賃料・敷金・フリーレントなど5つの項目で交渉の余地があります。条件次第で初期費用を数十万〜数百万円削減できるケースも珍しくありません。
居抜きオフィスの交渉で重要なのは「タイミング」と「市場状況の把握」です。特に空室率が高いビルや、周辺相場より賃料が高い物件では交渉が通りやすくなります。
本記事では、居抜きオフィスで交渉できる5つの項目と、それぞれの交渉が成功しやすい条件を解説します。
この記事の目次
居抜きオフィスで交渉できる5つの項目【難易度別】
居抜きオフィスへの入居時に交渉可能な項目は主に5つあります。ただし、項目によって交渉の難易度は異なるため、まずは全体像を把握した上で自社の状況に合った交渉戦略を立てましょう。
| 交渉項目 | 難易度 | 削減効果の目安 | 交渉が通りやすい条件 |
|---|---|---|---|
| 賃料(坪単価) | ★★★ 難しい | 月額5〜15%削減 | 空室率高・長期空室・相場より高い物件 |
| 敷金(保証金) | ★★☆ 中程度 | 1〜3ヶ月分減額 | 保証会社利用可能な場合 |
| フリーレント | ★★★ 難しい | 1〜3ヶ月分 | 居抜きでは難航しやすい(後述) |
| 入居時期 | ★★☆ 中程度 | 二重賃料の回避 | 三者合意が前提 |
| 償却金 | ★☆☆ 比較的容易 | 敷金の1ヶ月分 | 契約前のみ交渉可能 |
それぞれの項目について、交渉のポイントと成功条件を詳しく解説していきます。
交渉①|賃料(坪単価)を下げる
賃料交渉は最も難易度が高いですが、成功すれば毎月の固定費削減に直結します。ただし、むやみに交渉すると心象を悪くするリスクもあるため、条件を見極めることが重要です。
賃料交渉が通りやすい3つの条件
賃料(坪単価)の値下げ交渉は、以下の条件が揃っている場合に成功しやすくなります。
- ビル内の空室率が高い(目安:20%以上)
- 当該物件の空室期間が長い(6ヶ月以上)
- 周辺物件の賃料相場よりも高い値付けをされている
また、募集図面に「諸条件相談可」と記載されている物件は、オーナー側に交渉余地があることを示しています。坪単価(賃料)や保証金、礼金など何かしら融通をきかせてもらえる可能性が高いでしょう。
交渉時の注意点
いきなり大幅な値下げ(10%以上など)を要求すると、「この会社は契約後も無理な要求をしてくるのでは」と警戒されるリスクがあります。
交渉はあくまで「相談」のスタンスで行い、オーナーとの良好な関係構築を意識しましょう。
交渉のベストタイミング
賃料交渉は、新規入居時よりも契約更新時の方が通りやすい傾向があります。入居時に交渉する場合は、申込み前に条件確認として打診するのがベストです。
▼各エリアの賃料相場をチェック
交渉②|敷金(保証金)を減額する
敷金交渉の基本戦略
敷金は一般的に賃料の6〜12ヶ月分が相場ですが、以下の条件を満たす場合は減額交渉が可能です。
- 保証会社の利用を提案できる
- 与信が高い企業(上場企業、有名VC出資先など)
- 長期契約(3年以上)を約束できる
スタートアップの場合、VCからの調達実績や有名企業との取引実績を伝えることで、与信面のハードルをクリアできるケースがあります。
保証会社活用のメリットとデメリット
保証会社を利用すると、敷金を2〜4ヶ月分に抑えられる可能性があります。一方で、保証料(賃料の0.5〜1ヶ月分程度)が別途発生する点には注意が必要です。
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 保証会社利用 | 敷金を2〜4ヶ月分に抑えられる | 保証料(賃料の0.5〜1ヶ月分)が発生 |
| 通常契約 | 保証料不要 | 敷金6〜12ヶ月分が必要 |
初期費用を抑えたいスタートアップにとっては、保証会社の活用は有効な選択肢といえるでしょう。
交渉③|フリーレントを獲得する【居抜き特有の注意点】
居抜きでは前テナントの退去とほぼ同時に入居できるため、オーナー側にフリーレントを付けるメリットがありません。通常物件より交渉が難しい点を理解しておきましょう。
フリーレントは通常、内装工事期間の家賃を免除してもらう制度です。しかし居抜きの場合、工事期間がほぼ不要なため、オーナーにとってフリーレントを付ける理由がないのです。
なぜ居抜きではフリーレントが付きにくいのか
通常のスケルトン物件では、テナントが入居してから内装工事を行うため、1〜2ヶ月は営業できません。オーナー側も「工事期間中は使えないから」とフリーレントに応じやすい状況にあります。
一方、居抜き物件では以下の理由からフリーレントが付きにくくなります。
- 入居後すぐに営業開始できる(工事期間不要)
- オーナー側に空室リスク軽減のメリットがない
- 前テナントとの合意解約で空白期間も短い
それでもフリーレントを狙う場合のアプローチ
居抜きでフリーレントを獲得するには、オーナーにとってのメリットを別の形で提示する必要があります。
- 長期契約(5年以上)を条件に提案する
- 賃料を相場通りで受け入れる代わりにフリーレントを要求
- 「設備の追加工事が必要」という名目で短期間のフリーレントを交渉
ただし、無理なフリーレント交渉はオーナーとの関係悪化につながる可能性があります。他の交渉項目(敷金減額など)で初期費用を抑える方が現実的なケースも多いでしょう。
交渉が難しいと感じたらプロにお任せください
交渉を有利に進めるには、オーナーとの関係性や市場知識が欠かせません。ハイッテでは多数のオーナーとの取引実績があり、物件ごとの「交渉余地」を把握しています。
- 過去の成約実績に基づく相場感でアドバイス
- オーナーとの関係性を活かした条件調整
- 御社の状況に応じた最適な交渉戦略をご提案
居抜きオフィスの交渉は、通常のオフィス移転とは異なるポイントが多くあります。初期費用を最大限抑えたい方は、居抜き専門の仲介会社にご相談ください。
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交渉④|入居時期を調整する(合意解約の活用)
合意解約とは
居抜き移転特有の仕組みで、前テナントの解約予告期間中に後継テナントが見つかった場合、三者(オーナー・前テナント・後継テナント)の合意のもと入居時期を前倒しできる制度です。
合意解約を活用すれば、二重賃料(現オフィスと新オフィスの賃料が重複する期間)を最小限に抑えることができます。移転コスト削減の重要なポイントです。
合意解約の具体例
以下は、解約予告6ヶ月のオフィスで合意解約が成立した場合の例です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 解約予告日 | 4月1日に解約予告(6ヶ月前通知) |
| 本来の退去日 | 10月1日 |
| 後継テナントの希望 | 7月1日に入居したい |
| 合意解約成立時 | 7月1日〜10月1日の3ヶ月分賃料を後継テナントが負担し、前テナントは3ヶ月早く退去 |
この例では、前テナントは3ヶ月分の賃料負担を免れ、後継テナントは希望のタイミングで入居できるという双方にメリットのある取引が成立しています。
入居時期交渉の注意点
合意解約は、オーナー・前テナント・後継テナントの三者全員の同意が必要です。一方的な交渉や無理な要求は避けましょう。
入居時期の調整を成功させるポイントは以下の通りです。
- 前テナントにとってのメリット(原状回復費用の削減など)を理解して交渉する
- 仲介会社を通じて円滑に調整を進める
- 早めに入居意思を伝え、スケジュールに余裕を持つ
▼オフィス移転のタイミングについて詳しく知る
交渉⑤|償却金(敷引き)を確認・交渉する
償却金とは
償却金とは、退去時に敷金・保証金から差し引かれる費用です。関西・九州など西日本では「敷引き」とも呼ばれます。
相場は敷金・保証金のうち1ヶ月分程度ですが、物件によっては2〜3ヶ月分に設定されているケースもあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 償却金の相場 | 敷金・保証金の1ヶ月分 |
| 別名 | 敷引き(関西・九州地方) |
| 差し引かれるタイミング | 退去時 |
償却金交渉のポイント
賃貸借契約書に署名・捺印した後は、償却金の減額や支払い拒否は法的に認められません。交渉は必ず契約前に行いましょう。
契約前に確認すべきポイントは以下の通りです。
- 償却金の金額(敷金の何ヶ月分か)
- 途中解約時の償却金の扱い
- 契約期間と償却金の関係(○年未満の解約で償却金が増えるケースも)
償却金の存在を契約時に確認しておらず、退去時にトラブルになる事例は少なくありません。特約事項は必ず入念に確認してから署名・捺印しましょう。
交渉を成功させるための事前準備
交渉を有利に進めるためには、事前準備が欠かせません。必要書類を揃え、自社の条件を整理しておきましょう。
必要書類を事前に揃える
交渉時に以下の書類が揃っていると「入居意思が固い」と判断され、条件交渉に応じてもらいやすくなります。
- 会社謄本(履歴事項全部証明書)
- 決算書(直近2〜3期分)
- 会社案内・事業説明資料
- 代表者の本人確認書類
- 連帯保証人に関する書類(必要な場合)
譲れる条件・譲れない条件を整理する
すべての条件で交渉するのではなく、優先順位を決めておくことが重要です。
【例】「賃料は相場通りで構わないが、敷金は4ヶ月以内に抑えたい」「フリーレントは諦めるが、入居時期は7月1日までに確定させたい」
条件の優先順位が明確であれば、交渉の落としどころも見つけやすくなります。
交渉時の注意点3つ
交渉を進める際に気をつけるべきポイントを3つご紹介します。
1. オーナーとの関係性を損なわない
交渉はあくまで「相談」のスタンスで行いましょう。賃料を払っているとはいえ、他人の物件の一部を借りているという意識を持つことが大切です。
東京23区内のビルオーナーは複数物件を所有していることが多く、今回の交渉が今後の取引にも影響する可能性があります。日頃から挨拶や報告を欠かさず、良好な関係を築いておきましょう。
2. 内装・設備の状態を事前に確認する
居抜き物件は「現状有姿」での引き渡しが基本です。入居後に設備の不具合が発覚しても、修理費は入居テナント負担となるケースがほとんどです。
- エアコン、照明など設備の動作確認
- 設備の購入時期・メンテナンス履歴
- 内装の傷・汚れ・劣化状況
- 譲渡品リストとの照合
問題があれば、修繕を条件に入れるなど交渉材料として活用しましょう。
3. 契約書の特約事項を入念に確認する
償却金、途中解約時のペナルティ、原状回復義務の範囲など、特約事項は必ず確認してください。
契約書に署名・捺印した後は、内容を覆すことはほぼ不可能です。不明点があれば仲介会社に説明を求め、納得してから署名しましょう。
▼居抜き退去時の交渉について詳しく知る
よくある質問
Q. 居抜きオフィスで賃料交渉は可能ですか?
A. 可能ですが、条件があります。ビル内の空室率が高い場合、空室期間が長い場合、周辺相場より賃料が高い場合などに交渉が通りやすくなります。募集図面に「諸条件相談可」と記載された物件は交渉の余地があるサインです。
Q. 居抜きオフィスでフリーレントは付きにくいと聞きましたが本当ですか?
A. その通りです。居抜きでは前テナントの退去とほぼ同時に入居できるため、オーナー側に空室期間を短縮するメリットがありません。そのためフリーレント交渉は通常物件より難航しやすい傾向があります。長期契約を条件に提案するなど、別の交渉材料が必要です。
Q. 交渉は自分でやるべきですか?プロに任せるべきですか?
A. 市場相場やオーナーとの関係性を把握している仲介会社に任せる方が、結果的に有利な条件を引き出しやすくなります。特に居抜き物件は通常物件と交渉ポイントが異なるため、居抜き専門の仲介会社に依頼することをおすすめします。
Q. 合意解約とは何ですか?
A. 前テナントの解約予告期間中に後継テナントが見つかった場合、三者(オーナー・前テナント・後継テナント)の合意のもと入居時期を前倒しできる仕組みです。後継テナントは残りの賃料を負担する代わりに早期入居でき、前テナントは賃料負担を軽減できます。
まとめ|居抜きオフィスの交渉で初期費用を削減しよう
居抜きオフィスの交渉では、以下の5つの項目で費用削減の可能性があります。
- 賃料(坪単価):空室率が高いビルで交渉余地あり
- 敷金:保証会社活用で減額可能
- フリーレント:居抜きでは難航しやすいが長期契約で突破口
- 入居時期:合意解約で前倒し可能
- 償却金:契約前のみ交渉可能
交渉を成功させるカギは「タイミング」と「市場知識」です。自社だけで判断が難しい場合は、居抜き移転の実績豊富な仲介会社にご相談ください。
ハイッテでは、居抜きオフィス・セットアップオフィスの仲介実績を多数持つ専門スタッフが、御社の状況に合わせた交渉戦略をご提案します。物件探しから交渉、契約まで一貫してサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。
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監修者
株式会社IPPO 共同創業者 取締役 大隅識文
宅地建物取引士【東京都知事:第237969号】
中央大学卒業後、マスメディア向け制作会社に入社し経営にも携わる。その後不動産仲介会社に転職し、共同創業者として2018年株式会社IPPO(イッポ)を設立。シード・アーリー期のスタートアップ企業から上場企業までオフィス移転取引社数は500社以上、うち居抜きオフィス移転の取引実績は200社以上に達する。オーナーとの関係性も非常に良く、居抜きオフィス移転の実務を知り尽くした、きめ細かなサポートに、オーナー・顧客からの信頼も厚く、リピートが絶えない。

執筆者 ハイッテ編集部
株式会社IPPO全般のマーケティングを担っています。ハイッテの運用のほか、オフィス移転事例や賃料相場、オフィス調査なども行なっております。


