監修者:大隅識文
株式会社IPPO共同創業者/取締役
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資金調達が完了し、事業拡大のため、オフィス移転を考えているが、費用を削減して研究開発や採用に予算を充てたい
居抜きオフィスというオフィス形態を聞くようになったが、メリットやデメリットを知りたい
資金調達後のスタートアップ企業・ベンチャー企業や、従業員のモチベーションアップを図りたい中堅企業に居抜きオフィスが人気となってきています。
飲食店でよく行われている「居抜き」は、今の時代、SDGsの観点からオフィスにも適用される、革新的なオフィス移転のあり方となっています。
居抜きによるオフィス移転は、入居の初期費用を削減できるだけでなく、原状回復工事や内装工事の期間を短縮でき、環境保護の観点からも入京するスタートアップ・ベンチャー企業やVC(ベンチャーキャピタル)、オフィスビルオーナーにもメリットがあります。
今回は、居抜きオフィスのメリットや注意点について、ご紹介します。
この記事の目次
居抜きオフィスとは
居抜きオフィスとは、前の入居者が残した家具やレイアウトがそのままの状態で貸し出されるオフィスです。
居抜きオフィスは、一部または全ての内装や什器が残されているため、初期費用を抑えたいスタートアップ、ベンチャー企業に最適なオフィス形態として注目されています。
また、居抜きオフィスは原状回復義務が次の入居企業に引き継がれます。
そのため、居抜きオフィスとして退去した場合、退去する企業は原状回復工事の費用を削減できます。
現在、東京都心で再開発事業が進む中、取り壊しが決まっているオフィスビル一部の内装を残して退去し、入居した企業にも原状回復義務が免除になるオフィスも登場しており、居抜きオフィスという形態が広まりつつあります。ごとに契約内容が異なります。
その背景にオフィスの空室が出た際に、空室期間を短くするためにオーナー(貸主)が居抜きを許可するケースが出てきました。
スタートアップ・ベンチャー企業に人気の高い渋谷では、再開発が進んでおり、50坪〜70坪の居抜きオフィスの募集が増えています。
セットアップオフィスとの違い
セットアップオフィスとは、貸主(オーナー)がオフィス内の間取り工事を行い、提供されるオフィスです。
内装デザインの他、業務に必要な家具・備品、会議室やインターネットや電気配線といった設備などすべてが準備された状態で提供されます。
スケルトン天井との違い
居抜きオフィスは、前のテナントが使用していた内装や設備が残されたまま引き渡されます。これに対して、スケルトンは、内装や設備を一切設けず、床や天井のみの状態で引き渡されます。
居抜きオフィスのメリットは、すでに内装や設備が整っているため、移転後すぐに事業を再開できる、つまり、入居までの期間が短縮できることです。
また、前のテナントが設置した内装や設備を利用することで、新たにオフィスのレイアウトを考える手間や費用を削減できることも魅力的です。
一方、スケルトンのメリットは、自社のニーズやブランドイメージに合わせてオフィスの内装や設備を自由にデザインできる点です。
また、最新の設備を導入することで、効率的かつ快適なオフィス環境を構築できますが、内装工事や設備導入に時間と費用が必要となります。
それぞれの特徴を踏まえた上で、オフィス環境や予算、ブランドイメージなど、総合的な視点で居抜きオフィスとスケルトンオフィスの選択を行うことがオフィス移転成功のポイントです。
居抜きオフィスと他のオフィス形態について
居抜きオフィスはオフィス形態としてまだ新しく、東京都心でオフィス賃料が高騰する近年、注目度が高まっています。
オフィス形態には、居抜きオフィス、セットアップオフィス、サービスオフィス、レンタルオフィス、コワーキングスペース、シェアオフィス、バーチャルオフィスがあり、それぞれ特徴があります。
居抜きオフィスが注目されている背景
スタートアップ企業やベンチャー企業に人気の理由は以下の通りです。
コスト削減
居抜きオフィスは、既にオフィス家具や設備が整っているため、新規で購入する必要がありません。これにより、初期投資を抑えることができ、削減した予算は採用や研究開発に回せます。
移転時間の短縮
居抜きオフィスは、内装やオフィス家具が揃った状態のため、契約後入居してすぐに業務を開始できます。
そのため、通常オフィスで必要とされる内装工事が不要となり、1〜1.5ヶ月の内装工事期間やオフィス家具購入に関わる時間を削減できます。
加えて、内装を考える時間やコンペを行っている時間の短縮にもつながり、スタートアップ・ベンチャー企業は急激な事業拡大が見込まれることがあるため、時間短縮は事業拡大にも大きなメリットがあります。
内装工事や原状回復費用の削減
オフィス移転専任で業務を行う担当者は少なく、特にスタートアップ・ベンチャー企業の場合は経営者がオフィス移転業務も並行することが多いです。
しかし、オフィス移転のタスクは最重要項目だけでも35項目あり、他の業務も行いながら対応するには荷が重いものです。
居抜きオフィスは内装工事やオフィス家具購入の必要がないため、それに対する工数が削減できます。
企業ブランディング
スタートアップ・ベンチャー企業は攻めた事業を展開する中で同時に企業ブランディングも必要となります。
その際に居抜きオフィスに入居することで、廃棄物を減らし内装やオフィス家具を再利用することになり、SDGs目標No.12「つくる責任 つかう責任」の貢献もできます。
これにより、SDGsに配慮した企業というブランディングにも繋がります。
以上の理由から、スタートアップ企業やベンチャー企業には居抜きオフィスが非常に魅力的な選択肢となっています。
場合によっては不足するオフィス家具の購入や追加の内装工事が必要な場合もあるため注意しましょう。
居抜きオフィスのメリット
コスト削減やスケジュール短縮ができる居抜きオフィスのメリットを入居時と退去時に分けて紹介します。
居抜きオフィスへの入居メリット
スタートアップ・ベンチャー企業が居抜きオフィスに入居する場合、下記のようなメリットが挙げられます。
- 内装工事費用・什器購入費用の削減できる
- 内装工事期間の短縮できる
- 入居後すぐに利用可能
居抜きオフィスに入居すると内装工事や什器購入のコストを削減できるだけでなく、入居後すぐに稼働開始できる場合が多いです。
そのため、スピード感を重視するスタートアップ・ベンチャー企業に人気になっています。
また、前テナントが残した内装の原状回復義務が引き継がれるため、退去時に原状回復を行う必要があることも念頭に入れておきましょう。
もし、居抜きで退去したい場合は、再度オーナーの承認を得る必要があります。
居抜きによる退去メリット
次に退去する場合は、下記のような内容が挙げられます。
- 原状回復費用・什器の処分費用を削減できる
- 解約予告期間を短縮できる
- 引き渡し直前まで利用できる
内装をそのまま引き継ぐ、什器を譲渡することで、SDGsのNo.12「つくる責任、使う責任」に貢献し、環境への負荷軽減にも繋がります。
居抜きで退去する場合、トラブル防止のために後継テナントとの間で造作譲渡契約書を締結しましょう。
どの内装を引き継ぐのか、どの什器をいくつ譲渡するのかを明確にすることでトラブル防止に繋がります。
居抜きオフィスのデメリット
居抜きオフィスのデメリットを入居時・退去時に分けて紹介します。
居抜きオフィスの入居デメリット
居抜きオフィスに入居する場合、下記のようなデメリットが挙げられます。
- 既に内装がある場合、内装をカスタマイズしにくい
- 内装に経年劣化がある場合がある
- オフィスの場合、居抜きの物件数が少ない
中には内装の老朽化により内装工事が必要なオフィス物件もあります。
その場合はオフィスによって工事区分が異なり、内装によっては工事期間が数ヶ月かかる場合もあれば予定よりも多くコストがかかってしまう場合もあるので、事前に確認しましょう。
また、近年、居抜きオフィスも増えていますが、飲食店に比べると物件数が少ないです。
居抜きオフィスの情報が一部の不動産会社にしか開示されていないケースもあるため、仲介業者に相談する際は居抜きオフィスの仲介実績があるといいでしょう。
居抜きによる退去のデメリット
次にオフィスを居抜き退去する場合は、下記のようなデメリットが挙げられます。
- オーナーへの交渉が必要な場合がある
- 後継テナントが見つからない場合がある
- 必要な書類と確認事項が通常の退去よりも多くなる
オフィスでの居抜き物件が少しずつ増えていますが、オーナーによっては居抜き不可の場合もあります。
加えて、居抜きオフィスの場合、仲介業者にとっても事例が少なく負担が大きいため対応できないケースもあります。
居抜き入居を検討する際同様、居抜きオフィスの仲介実績がある仲介業者に依頼しましょう。
また、居抜きによる退去の場合、内装や什器を譲渡するための造作譲渡契約書が必要です。
居抜きオフィスには大きなメリットがある一方でデメリットもあります。慣れていない仲介会社が間に入るとトラブルが発生してしまうことも…。
居抜きオフィス移転を多数仲介する株式会社IPPOの宅建士監修の居抜きトラブル事例を見てトラブルに備えましょう。
居抜きオフィスを選ぶときの注意点
通常のオフィスに比べてトラブルが起きやすい居抜きオフィス。注意すべきことを紹介します。
退去するまでの移転スケジュール
オフィスによっては居抜きオフィスでも内装工事が必要な場合があります。
その際は工事区分を確認の上、どのような内装工事を実施するのかを決めてスケジュールを確認しましょう。
大規模な内装工事や部品が届かないなどにより予定よりも工事期間が数ヶ月伸びる可能性もあります。
関係各所への確認
居抜きオフィスは通常のオフィスと異なり、オーナー、前テナントまたは後継テナント、仲介業者、内装業者の最大4社間でのやりとりが発生します。
通常オフィスでは前テナントまたは後継テナントとのやりとりは基本的に発生しません。
また、出資を受けている会社の場合は株主からオフィス選びの指摘を受けるケースもあります。
事前に決裁の確認をしておきましょう。
造作譲渡契約の締結
内装や什器の全てを譲渡する場合でも一部を譲渡する場合でも造作譲渡契約書の締結しましょう。
通常のオフィスに比べて書類が増えますが、トラブル防止に役立ちます。
退居時の原状回復義務の有無
前述したように居抜きオフィスに入居すると原状回復義務が引き継がれることになります。
その際、内装によっては多額の原状回復費用が発生するため、退去時にかかる原状回復義務についても確認しましょう。
前テナントが内装にこだわって特殊な内装を入れていた場合、原状回復費用も比例して高くなる傾向にあります。
東京都のおすすめの居抜きオフィス
東京都のおすすめ居抜きオフィス・事務所をご紹介します。
東京都で、現在公開中のおすすめの居抜きオフィス物件です。
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ハイッテ by 株式会社IPPOでは、スタートアップ・ベンチャー企業を中心に経営戦略(採用計画や事業開発)に応じた居抜きによる移転を手がけています。
その中で、スタートアップ・ベンチャー企業はシードやシリーズAのステージで特にオフィス移転に対して費用面での課題が発生するのを肌で感じていました。
株式会社IPPOではスタートアップ・ベンチャー企業に特化した支援を行い、業界特有の課題を解決できる移転方法「居抜き移転」に注力して支援を実施しています。
監修者
株式会社IPPO 共同創業者 取締役 大隅識文
宅地建物取引士【東京都知事:第237969号】
中央大学卒業後、マスメディア向け制作会社に入社し経営にも携わる。その後不動産仲介会社に転職し、共同創業者として2018年株式会社IPPO(イッポ)を設立。シード・アーリー期のスタートアップ企業から上場企業までオフィス移転取引社数は500社以上、うち居抜きオフィス移転の取引実績は200社以上に達する。オーナーとの関係性も非常に良く、居抜きオフィス移転の実務を知り尽くした、きめ細かなサポートに、オーナー・顧客からの信頼も厚く、リピートが絶えない。
執筆者 ハイッテ編集部
株式会社IPPO全般のマーケティングを担っています。ハイッテの運用のほか、オフィス移転事例や賃料相場、オフィス調査なども行なっております。