この記事の目次
なぜ今、福岡なのか
東京一極集中が長年続いてきた日本のビジネス界で、今、福岡が第二の拠点として注目を集めています。福岡市は4年連続で「住みたい街」ランキング1位に選ばれ、その魅力は全国に浸透しつつあります。
なぜ多くの企業が福岡に目を向けているのでしょうか。その答えは、行政の強力なバックアップ、アジアへの地理的優位性、そして何より、開業率が21大都市の中で最も高いという起業家精神にあふれた土壌にあります。
2012年に「スタートアップ都市宣言」を発表して以降、福岡市は一貫してスタートアップ支援に力を入れてきました。10年間で創業相談件数は約10倍、資金調達額は約70倍、市内のファンド規模は約5倍という驚異的な成長を遂げています。
さらに、福岡市は内閣府の「スタートアップ・エコシステム拠点都市」に選定され、政府からも世界に伍するスタートアップ拠点として期待されています。2024年にはユニコーン企業1社とユニコーン級企業2社を擁するまでに成長しました。
東京の企業が地方展開を検討する際、なぜ福岡を選ぶべきなのか。それは、ビジネスの成長可能性と生活の質の向上を同時に実現できる、日本でも稀有な都市だからです。本記事では、データと実例を交えながら、福岡でオフィスを構えるメリットを詳しくご紹介します。
数字で見る福岡のスタートアップシーン
開業率日本一の実績
福岡市の開業率は国内主要都市(21大都市)の中で5年連続で最も高く、起業家にとって最適な環境が整っています。この高い開業率は、市内に大手製造業の企業がなく、市内総生産の9割以上を商業・サービス業などの第三次産業が占めているという産業構造も影響しています。
急成長する資金調達環境
福岡のスタートアップシーンは、資金調達の面でも大きな成長を遂げています。2012年の福岡市スタートアップの資金調達額は約2億円でしたが、2021年には約254億円と10年で120倍超の成長を記録しました。
2024年の最新データでは、EVモーターズ・ジャパンが20.9億円、ヤマップが20.4億円、ACCELStarsが10.9億円といった大型調達が相次ぎ、福岡のスタートアップエコシステムの成熟度を示しています。
充実した支援インフラ
福岡市の官民共働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」は、2017年4月の開設以来、入居期間中に資金調達に成功したスタートアップは延べ85社、その金額は365億円を超え、1262名の新規雇用を創出しました(2023年3月末時点)。
また、スタートアップカフェが受け付けた起業相談は2万件を超え、そこから801社が創業するなど、創業支援の実績も豊富です。
経済規模と成長性
福岡市の市内総生産は7兆7,911億円で、政令指定都市の中で第4位の規模を誇ります。特筆すべきは、第3次産業が占める割合が90.84%と20政令指定都市の中でトップである点です。これは、ITやサービス業を中心とした新しいビジネスが育ちやすい環境であることを示しています。
スタートアップコミュニティの厚み
福岡スタートアップ・コンソーシアムには74社・団体・大学等が参画し、産学官が一体となってスタートアップを支援する体制が整っています。2022年から2023年にかけては、ヌーラボとFusicが東証グロース市場への上場を果たし、エコシステムの成熟を示しました。
これらの数字は、福岡が単なる地方都市ではなく、日本のスタートアップエコシステムにおいて重要な位置を占める都市へと成長したことを物語っています。東京に次ぐ第二の拠点として、福岡は確実にその存在感を高めています。
福岡でオフィスを構える5つのメリット
1. 充実したスタートアップ支援施設
福岡市は、スタートアップ支援において国内屈指の充実度を誇ります。その中核となるのが「Fukuoka Growth Next」で、2017年4月の開設以来、入居期間中に資金調達に成功したスタートアップは延べ85社、その金額は365億円を超え、1262名の新規雇用を創出しています(2023年3月末時点)。
2024年4月からは「スタートアップカフェ」と一体化し、創業から成長まで一貫したサポートを提供する体制が整いました。スタートアップカフェは2014年10月の開設以来、2万件を超える起業相談を受け付け、801社の創業を支援してきた実績があります。
その他にも、G’s ACADEMY FUKUOKA、COMPASS小倉、さらには九州大学を中心とした「PARKS」プログラムなど、多様な支援施設やプログラムが用意されており、どの成長フェーズにある企業でも適切なサポートを受けることができます。
2. 東京と比較して圧倒的な賃料の優位性
福岡のオフィス賃料は、東京と比較して極めて競争力があります。2024年6月期の福岡主要オフィスゾーンの想定成約賃料(共益費込)は16,150円/坪となっています。一方、東京ビジネス地区(都心5区)の2024年6月時点の平均賃料は20,877円/坪と、福岡と比較して約30%高い水準です。
さらに詳しく見ると、福岡の天神・赤坂・大名といった中心エリアでも坪単価20,000円を超える物件は限定的で、福岡県全体では坪単価4,500円~5,000円程度が平均的です。
この賃料差は、特にスタートアップや成長企業にとって大きなメリットとなります。東京で100坪のオフィスを借りる場合と福岡で借りる場合では、年間で約600万円もの差が生じる計算になり、その資金を人材採用や事業投資に回すことができます。
3. 豊富な資金調達機会と手厚い補助金制度
福岡市のスタートアップへの資金面でのサポートは、国内でもトップクラスです。2024年の資金調達実績では、EVモーターズ・ジャパンが20.9億円、ヤマップが20.4億円、ACCELStarsが10.9億円といった大型調達が相次いでいます。
補助金制度も充実しており、福岡市独自の「研究開発型スタートアップ成長支援事業補助金」では、Aコースで最大200万円(補助率10/10)、Bコースで最大1,000万円(補助率2/3)の支援を受けることができます。
さらに、「福岡市新規創業促進補助金」では登録免許税の半額軽減後の残り半額分を支援し、「福岡市ステップアップ助成事業」では成長性の高いビジネスプランに対して資金補助を行うなど、多層的な支援体制が整っています。
福岡スタートアップ・コンソーシアムには74社・団体・大学等が参画し、VCやアクセラレーターも充実しているため、資金調達の機会が豊富にあります。
4. 行政による強力なバックアップ体制
福岡市の行政支援は、単なる補助金提供にとどまりません。2012年の「スタートアップ都市宣言」以降、一貫してスタートアップ支援を市政の中核に据え、2020年には内閣府の「スタートアップ・エコシステム拠点都市」に選定されました。
市長自らがスタートアップイベントに登壇し、IPO経験者との対談を行うなど、トップダウンでの支援姿勢が明確です。2014年には国家戦略特区「福岡市グローバル創業・雇用創出特区」の指定を受け、法制・税制など様々な規制緩和策を実現しています。
また、「スタートアップビザ」制度により外国人起業家の受け入れも積極的に行っており、2024年度までに累計102件の認定を達成しています。さらに、公共調達サポート事業により、スタートアップの製品やサービスを福岡市が積極的に採用する仕組みも整備されています。
5. アジアをはじめとする世界への優れたアクセス
福岡の地理的優位性は、ビジネスの国際展開において大きなアドバンテージとなります。福岡空港は東・東南アジアの渡航国数で日本一を誇り、アジアの主要都市へ短時間でアクセス可能です。
具体的には、ソウルまで1時間半、台北まで1時間25分、上海まで1時間40分、香港まで2時間50分、バンコクまで3時間15分、シンガポールまで4時間と、日帰り出張も可能な距離にあります。
福岡空港の乗降客数は国内第3位で、アジアを中心とした数多くの国際便が運航しています。現在、国際線22路線が就航しており、韓国からは格安航空会社6社が乗り入れるなど、選択肢も豊富です。
この地理的優位性は、アジア市場への展開を考える企業にとって大きな魅力となっています。実際、福岡市はシンガポールやヘルシンキなど海外都市とMoUを締結し、スタートアップの海外展開支援プログラムも充実させています。
これらの5つのメリットが相乗効果を生み、福岡は単なる地方都市ではなく、日本とアジアをつなぐビジネスハブとして機能しています。東京からの移転を検討する企業にとって、コスト削減と成長機会の両方を実現できる理想的な選択肢といえるでしょう。
4. エリア別オフィス市場の特徴
博多駅周辺
九州の玄関口として機能する博多駅周辺は、新幹線駅直結という圧倒的なアクセス優位性を誇ります。博多駅周辺は空港および新幹線へのアクセスの良さが改めて評価され、需要が伸びている。加えて、再開発促進策「博多コネクティッド」により建替えに伴う移転需要も底堅い状況です。
このエリアでは、IT企業や全国展開企業の九州拠点が多く立地し、博多駅前地区の空室率は2.35%と極めて低い水準を維持しています。「博多コネクティッド」により、今後も大規模な再開発が続く予定で、最先端のオフィスビルが次々と誕生しています。
天神・大名
福岡市の商業・ビジネスの中心地である天神・大名エリアは、九州一の繁華街であり、商業施設とオフィスビルが混在しているエリアです。「天神ビッグバン」により、エリア全体が大きく生まれ変わりつつあります。
主に明治通り、昭和通り、渡辺通りという三つの大通りを中心にオフィスビルが集積しており、併せて大型商業施設も集積しているため集客性が高く、人材派遣や各種教室など、来店型テナントの人気が高いという特徴があります。
2024年には「ONE FUKUOKA BLDG.」など大型複合ビルが相次いで竣工し、クリエイティブ系企業やスタートアップの集積が進んでいます。
呉服町
呉服町・川端は、博多駅前と天神の中間に位置し、大博通り、明治通り、昭和通りを中心にオフィスビルが集積しているエリアです。博多の伝統と新しいビジネスが融合する独特の雰囲気を持っています。
祇園・呉服町地区の空室率は5.43%で、他地区からの拡張移転に伴い複数のビルで成約が進み、同空室率は28カ月ぶりの5%台に低下しました。大博通り、昭和通り、明治通りなどの沿線はオフィス街として賑わっているが、一歩裏手に入ると昔ながらの下町の風情が残っており、寺院も多いという特徴があります。
比較的賃料が手頃で、天神・博多の両エリアへのアクセスが良好なため、コストパフォーマンスを重視する企業に人気です。
薬院
渡辺通・薬院は、天神の南側に位置し、主に渡辺通りから西鉄薬院駅周辺にオフィスビルが集積しているエリアです。落ち着いた環境と利便性を兼ね備えた、成長著しいオフィスエリアとして注目されています。
現状、他のエリアに比べてオフィスビルの棟数はそれほど多くないが、今後、当地区では再開発計画やオフィスビルの計画が多数予定されており、注目が集まるエリアとなっています。
地下鉄七隈線の延伸により博多駅へのアクセスも向上し、閑静な環境を求める専門サービス業やクリエイティブ企業の進出が増えています。シェアオフィスやコワーキングスペースも充実し、フリーランスや小規模事業者にも人気のエリアです。
5. 福岡でのオフィス開設ステップガイド
市場調査と物件選定
エリア別の特徴を理解
福岡でのオフィス開設を成功させるためには、まず各エリアの特性を深く理解することが重要です。前述の通り、博多駅周辺は交通アクセスを重視する全国展開企業に、天神・大名はブランディングや集客を重視する企業に、呉服町はコストパフォーマンスを求める企業に、薬院は落ち着いた環境を求める専門サービス業に適しています。
2024年6月期の福岡主要オフィスゾーンの空室率は3.9%と低水準であるため、早めの物件探しが肝要です。特に人気エリアでは、良質な物件は公開前に決まることも多いため、不動産仲介会社との密な連携が必要です。
自社のビジネスモデルに合った立地選び
オフィス選定では、以下の観点から自社に最適な立地を検討しましょう:
顧客アクセス重視型:BtoC企業や来客の多い企業は、天神・大名エリアがおすすめです。商業施設との相乗効果も期待できます。
従業員満足度重視型:IT企業やクリエイティブ企業は、カフェや飲食店が充実し、働きやすい環境が整った薬院エリアが人気です。
コスト効率重視型:スタートアップや小規模事業者は、呉服町エリアで坪単価4,500円~5,000円程度の手頃な物件を見つけることができます。
交通利便性重視型:全国展開や海外展開を視野に入れる企業は、新幹線・空港へのアクセスが抜群の博多駅周辺が最適です。
将来の拡張を見据えた物件選定
福岡市は人口増加が続いており、ビジネスの成長可能性も高い都市です。そのため、以下の点を考慮した物件選定が重要です:
- フレキシブルな契約条件:増床や減床に対応できる物件や、同一ビル内での移転が可能な物件を選ぶ
- 共用施設の充実度:会議室やラウンジなど、成長に応じて活用できる施設があるか確認
- 周辺環境の将来性:天神ビッグバンや博多コネクティッドなど、今後の開発計画を把握し、エリアの将来像を見据えた選定
6. 今後の福岡
大規模な新規オフィス供給と市場の変化
福岡のオフィス市場は、2025年以降も大きな変革期を迎えます。2025年に1万9,574坪、2026年に2万7,255坪の新規供給を想定しており、これは福岡市の歴史上でも類を見ない大規模な供給となります。
この大量供給により、オフィス選択の幅が大きく広がることが予想されます。最新のBCP対応設備や環境配慮型の設計、フレキシブルなワークスペースなど、東京の最先端オフィスに匹敵する物件が次々と誕生する見込みです。企業にとっては、より良い条件でオフィスを確保できるチャンスが到来すると言えるでしょう。
継続的な都市開発による環境改善
2025年度から2034年度までの10年間にわたる第10次福岡市基本計画がスタートし、福岡市は次のステージへと進化します。天神ビッグバンと博多コネクティッドは2026年まで継続し、その後も新たな都市開発プロジェクトが計画されています。
注目の開発プロジェクト(2025-2026年)
- 西日本シティ銀行本店館建替えプロジェクトの完成
- 天神ビジネスセンター2期計画の進行
- 博多駅周辺の大規模再開発
これらの開発により、オフィスワーカーにとっての利便性は飛躍的に向上します。商業施設、飲食店、文化施設などが充実し、「働く」「暮らす」「楽しむ」が融合した、真のコンパクトシティが実現されていきます。
グローバルスタートアップハブへの進化
福岡市は、アジアのゲートウェイという地理的優位性を活かし、グローバルスタートアップハブとしての地位確立を目指しています。
国際化の加速要因
- 金融・資産運用特区の指定:国際金融機能の強化により、海外からの投資が活発化
- CIC Fukuokaの開業(2025年予定):世界的なイノベーション拠点の進出
- 海外都市との連携強化:シンガポール、ヘルシンキなど世界の主要都市とのMoU締結
2024年度までの目標として、ユニコーン企業1社とユニコーン級企業2社の創出を掲げており、既に複数の有力企業が台頭しています。2025年以降は、これらの企業が牽引役となり、さらなるエコシステムの成熟が期待されます。
半導体産業の集積 TSMCの九州進出を契機に、半導体関連企業の福岡進出が加速しています。これにより、ディープテック系スタートアップの成長環境が整い、新たな産業クラスターが形成される見込みです。
福岡でのオフィス開設を成功させるために
福岡でのオフィス開設を検討する企業にとって、今がまさに絶好のタイミングです。本記事で紹介した主要なポイントを改めて整理します:
1. 圧倒的なコスト優位性
- 東京と比較して約30%安いオフィス賃料
- 充実した補助金・支援制度
- 高い生活の質と低い生活コスト
2. 成熟したスタートアップエコシステム
- 5年連続開業率日本一の実績
- Fukuoka Growth Nextを中心とした支援インフラ
- 活発な資金調達環境(2024年は20億円超の大型調達も実現)
3. 戦略的な立地優位性
- アジア主要都市への優れたアクセス
- 国内主要都市への良好な接続性
- コンパクトシティによる高い業務効率
4. 継続的な都市の成長
- 人口増加が続く数少ない地方都市
- 大規模な都市開発による環境改善
- グローバル化の進展
IPPOができること
1. ワンストップサービス
- 市場調査から物件選定、契約まで一貫したサポート
- 東京基準での物件評価と福岡市場の特性を踏まえたアドバイス
- 内装工事業者、各種サービス業者の紹介
2. 地元ネットワークの活用
- 福岡の有力不動産オーナーとの独自ネットワーク
- 非公開物件情報の提供
- 地元企業や支援機関への橋渡し
3. 補助金申請サポート
- 各種補助金制度の最新情報提供
- 申請書類作成のアドバイス
- 行政機関との調整支援
4. アフターフォロー
- 入居後の各種トラブル対応
- 増床・移転ニーズへの対応
- 地元情報の継続的な提供
福岡は今、日本のビジネスシーンにおいて最も注目すべき都市の一つです。東京一極集中から地方分散への流れが加速する中、福岡は単なる地方都市ではなく、アジアに開かれた国際ビジネス都市として、独自の成長を遂げています。
私たちは、東京で培った不動産仲介のノウハウと、福岡の地域特性を深く理解することで、お客様の福岡進出を確実に成功へと導きます。福岡でのオフィス開設をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。
「なぜ今、福岡なのか」-その答えは、この記事でご紹介した数々のデータと事例が物語っています。次は、あなたの企業が福岡で新たな成功ストーリーを紡ぐ番です。
福岡での開業・移転のお手伝いはIPPOにおまかせください

監修者:関口秀人
株式会社IPPO 代表取締役社長
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