監修者:大隅識文
株式会社IPPO共同創業者/取締役
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居抜きオフィス・事務所の入居・退去は注意する点が多く、通常の賃貸オフィス移転に比べてトラブルが起こりやすいと言われています。
本コラムではどんなタイミングでトラブルになりやすいのか、トラブル事例とその対処法を解説します。
この記事の目次
居抜きオフィスでトラブルになりやすいタイミング
居抜きオフィスとは、退去テナントの内装や設備、場合によっては家具や什器を引き継いで入居ができるオフィスです。
通常、退去テナントは賃貸借契約を終了し退去する際に原状回復を行う義務があります。
居抜き退去できれば、次の入居テナントに原状回復義務を引き継がれるため、原状回復費用の削減が可能です。
また、入居テナントは内装費用や設備費用などの削減ができるため、内装工事が不要な場合、入居から稼働開始までの期間を短縮できます。
居抜きオフィスへの移転は、コスト削減や移転期間短縮など大きなメリットがある一方、確認を怠り、然るべき手順を踏まずに移転進めてしまうとトラブルに発展する可能性があります。
オーナーへの確認時に起きるトラブル
居抜きオフィスの入居・退去時は、いずれも必ず貸主(オーナー)への確認が必要です。
しかし、貸主(オーナー)の中には居抜きによる入居・退去を不可としている場合が多く、居抜きの入居・退去可否の確認時にトラブルになってしまうことがあります。
入居テナントがオーナーの確認をしないまま、SNSなどで次の入居テナントを募集していることがあります。実際に応募してみると、居抜き入居ができないという事例があります。
造作譲渡契約時に起きるトラブル
居抜きオフィスの入居・退去では退去テナントと入居テナントの間で必ず造作譲渡契約を締結します。
造作譲渡契約書は、何を譲渡・継承するのかを明確にするために作成しますが、その造作譲渡契約書に不備があることでトラブルになることがあります。
「テーブル×1」と記載があった場合、会議室Aにあるテーブルなのか、会議室Bにあるテーブルなのか、ファミレス席・ファミレス席のテーブルなのかわかりません。
造作譲渡契約書のほかに別途譲渡品リストを作成し、メーカー、品番、色、形、個数など詳細を記載することに加え、写真を添付しましょう。
引き渡し時に起きるトラブル
入居テナントが居抜き物件に入居して、引き継いだ内装・什器(オフィス家具)を確認する際、予定していた物がない、破損汚損していたという事例があります。
また、引き渡し時は問題がなかったものの、入居後半年以内に壊れてしまう場合もあります。
加えて、リース契約の什器がないかの確認も重要です。
設備や家具・什器の中にリース契約があった場合、引き継いだ次の入居テナントがリース料を支払和なければなります。
造作譲渡契約を締結する際、引き継ぐ什器が購入からどれくらい期間が経っているか、不具合がないかどうか、リース契約が含まれていないかなど細部まで確認し、書面で残しましょう。
居抜きオフィスへの移転で確認したい事前確認
居抜きによるオフィス移転を検討する際、以下の内容を事前に確認することで、移転トラブルを未然に防げます。
居抜きによる入居・退去が可能か確認する
退去予定のテナントが貸主(オーナー)から許諾を取ることなく、後継テナントを探してしまうとトラブルになる可能性があります。
「退去するテナントと入居するテナントで話を進めたものの居抜き移転ができない」ということになりかねません。
事前に貸主(オーナー)に相談をすれば、居抜きの入居・退去の許可が下りることもあります。
貸主(オーナー)の許諾が取れているかどうかを確認しましょう。
賃貸条件を確認する
居抜きオフィスの場合、内装の造作は引き継いでも賃貸条件は引き継げません。
貸主(オーナー)によっては据え置きのままで認められる事例もありますが、希望するエリアの空室率や経済状況によっても賃貸条件は変わります。
そのため、最新の相場を踏まえて、賃貸条件を吟味しなければなりません。
居抜きオフィスや新築オフィスの場合、入居期限が指定されている、キャンペーン開催などもあり、フリーレントが適用されることがあります。
必ず事前に賃料の確認と、必要があれば賃料交渉を行いましょう。
居抜きオフィスの内見で確認すべきこと
居抜きオフィス・事務所の内見の際は、以下のポイントを重点的に確認しましょう。
設備の移動・交換予定の有無を確認する
居抜きで入居したオフィスを退去するときに発覚した問題により、原状回復時にトラブルになることがあります。
空調を会議室の中に含めるため、前テナント側が空調を元の位置からずらした事例があります。
設備の移動工事は費用が高く、退去する際の原状回復が高くなってしまいがちです。
- 事前に設備の移動をしてるか
- 貸室の扉を交換していな
- 電気容量を増設してるか
退去するテナントに原状回復の見積りを依頼し、設備を変更しているかを把握しておくことが大切です。
故障や破損の有無を確認する
引き継いだ設備が故障していることがあります。デスクやチェアなどの什器が破損していることが多いといえます。
また、空調設備が故障していた場合、貸主(オーナー)設備であれば、貸主(オーナー)にて修理してもらえます。
ただし、退去テナントが増設した空調設備の場合は、入居テナントが空調の修理をしなければなりません。
導入企業が増えているスマートキーや防犯システムが不具合があり、セキュリティ対策が不十分である事例もあります。
空調設備(エアコン)の臭いを確認する
定期的にエアコンのフィルター清掃がされていないオフィスビルでは、カビの繁殖などにより、悪臭を放っている場合があります。
エアコン清掃費用も決して安くないため、事前にフィルター清掃の頻度、エアコンの清掃サイクルなどを確認し、必要であれば入居時にエアコン清掃の交渉をしましょう。
全ての照明が切れていないかを確認する
退去テナントが照明の交換をしないまま引渡しを受けると、入居テナントで照明を交換しなければなりません。
事前に説明を受けて承諾していない限り、不具合が発生していた場合、交換作業の費用を負担しなければなりません。
内装の汚れ具合を確認する
退去時の室内クリーニングは退去テナントに依頼しましょう。
内見時は内装もそのまま利用したいと考えたとしても、その後に手を加えたい箇所が出てくる可能性があります。
内見時に使用するイメージをしながら、どのような内装工事が必要か考えておきましょう。
床の張り替えを検討される、居抜き入居を希望の企業が多いといえます。
引き渡し什器(オフィス家具)と処分品を確認
引き渡しの際、什器(オフィス家具)一つひとつに付箋でナンバリングをして、個別で確認できるようにしましょう。
また、退去テナントがゴミを置いて行ってしまう事例があり、事前に処分の取り決めが大切です。
何を残すか残さないかを決め、それ以外のものがあった場合、処分費用は退去テナント側で負担するなど調整をしておくとトラブルを防げます。
居抜きオフィスのトラブル事例5選【対策法】
居抜き物件の入居・退去時は通常のオフィス・事務所移転に比べてトラブルが発生しやすいです。事例を確認して、予防しましょう。
オーナーの承認なしに居抜き入居が募集されていた
居抜き不可としているオフィスや事務所は珍しくありません。
許諾なしで退去する借主(テナント)が次に入居する後継テナントを居抜きで探した場合、トラブルになりやすいといえます。
居抜き退去・入居の許諾を得られていても、SNSへの投稿はNGとする場合があります。
オーナーの許諾を得てから居抜き退去の準備を進めましょう。また、後継テナントを探す際にSNSへ投稿をしても良いか確認をとりましょう。
賃貸借契約の多くは退去時の原状回復を義務付けられています。
居抜き移転は貸主(オーナー)、退去する借主(テナント)、次に入居する借主(テナント)全員にメリットがある手法ですが、退去予定のテナントが単独で進めてはなりません。
造作譲渡の調整中に賃貸借規約が締結された
退去テナントと入居テナントの間で造作譲渡契約の調整中にも関わらず、入居テナントとオーナーの間で賃貸借契約を締結してしまった場合にトラブルが起きやすいといえます。
賃貸借契約を締結してしまうと、造作譲渡契約の内容が反映されず、退去テナントにとって優位な内容に変更できてしまいます。
引き渡し状態の詳細を確認すると同時に造作譲渡契約と賃貸借契約は同時に契約締結しましょう。居抜きオフィス移転専門の仲介業者を間に入れることがおすすめです。
一部の什器や内装の撤去費用の負担が不明確
入居テナントから「退去テナントに内装や什器の一部を撤去してほしい」といった要望があった場合、撤去時に設備環境を維持するための内装工事が必要と判明することがあります。
内装規模によって一部解体する場合に追加の内装工事を行う必要があります。
居抜きオフィスに入居する際、撤去してほしい什器や内装は、置き型の什器や家具に留めておきましょう。
追加で撤去や内装工事を行う場合、早めに内装業者との打ち合わせをしておきましょう。
退去テナントの残留物があった
入居テナントが居抜き物件を引き渡された際に、造作譲渡契約書に記載されたもの以外の退去テナントの残留物があるトラブルがあります。
入居テナントから退去テナントへ確認を取っても解決しない場合もあります。
造作物の譲渡リストを作成しましょう。「何を譲渡するか」を明確にすることで居抜き物件引渡し時のトラブルを防止できます。
クリーニングを行ってから引き渡しを行うか、どちらの契約期間内で行うかなど詳細を事前に決めておきましょう。
原状回復の基準仕様書がない
が数年入居し、退去時に原状回復を行う際、原状回復の基準仕様書がないため、貸主(オーナー)・借主(入居テナント)間でトラブルになることがあります。
さらに原状回復工事の費用請求が想定より高額になることもめずらしくありません。
居抜きで入居した場合、前テナントから原状回復工事の義務が引き継がれるため、居抜きで退去しない場合は原状回復工事を行わなければなりません。
賃貸借契約時に原状回復に関する基準仕様書を取得しましょう。基準仕様書がない場合は、退去テナントから原状回復の見積りを取ってもらいましょう。
退去時は、金額や原状回復の必要箇所を確認する参考資料として使用します。
東京都のおすすめの居抜きオフィス
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監修者
株式会社IPPO 共同創業者 取締役 大隅識文
宅地建物取引士【東京都知事:第237969号】
中央大学卒業後、マスメディア向け制作会社に入社し経営にも携わる。その後不動産仲介会社に転職し、共同創業者として2018年株式会社IPPO(イッポ)を設立。シード・アーリー期のスタートアップ企業から上場企業までオフィス移転取引社数は500社以上、うち居抜きオフィス移転の取引実績は200社以上に達する。オーナーとの関係性も非常に良く、居抜きオフィス移転の実務を知り尽くした、きめ細かなサポートに、オーナー・顧客からの信頼も厚く、リピートが絶えない。
執筆者 ハイッテ編集部
株式会社IPPO全般のマーケティングを担っています。ハイッテの運用のほか、オフィス移転事例や賃料相場、オフィス調査なども行なっております。