監修者:大隅識文
株式会社IPPO共同創業者/取締役
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オフィス移転は最低でも6ヵ月前から準備しておく必要があります。
退去時の手続き漏れやスケジュール遅延は二重家賃の発生や業務効率の低下など様々な弊害を引き起こします。
本記事では、株式会社IPPOが提供する「オフィス移転マニュアル(完全ガイド)」を元に失敗しないスケジュールやタスク、注意点を解説します。
この記事の目次
なぜオフィス移転の業務フローマニュアルが必要なのか
オフィス移転マニュアル(完全ガイド)は、オフィス仲介のプロが作成しているため、タスクの整理や事前準備を確実に行えます。
まずは「なぜオフィス移転マニュアルが必要か」を理解しましょう。
スケジュール遅延による想定外の出費防止
オフィス移転を成功させるためには、スケジュール遅延や想定外の出費を防ぐための事前準備が必要です。
退去手続きをはじめ、手続きが遅れると移転完了日も先送りになり、想定外の出費に加えて、生産性低下も発生してしまい、事業活動にも悪影響を及します。
最悪の場合、移転予定地にオフィス移転自体が不可能となってしまい、今まで費やした労力や時間も失いかねません。
退去トラブルを回避できる
オフィス移転では、旧オフィスの解約告知の時期や原状回復義務をはじめ、退去時トラブルが発生しやすい傾向があります。
自社ビルでない場合、多くの会社が賃貸借契約のため、退去手続きでトラブルが発生するとオフィス移転のスケジュールに遅延が生じ、多大な原状回復費用の発生や裁判に発展する可能性があります。
移転に伴う費用・やることを確認できる
オフィス移転マニュアルでは、移転に伴う費用をあらかじめ把握できます。
移転に必要な手続きややることを整理して、確認できることで迅速な移転を実現できます。
オフィス移転は人事部や総務部が担当しますが、初めてのオフィス移転では戸惑うことも少なくありません。
オフィス移転仲介業者が提供している「オフィス移転マニュアル」では、移転に必要な手続き、書類から代表的な移転スケジュール(従業員規模別など)をわかりやすく解説しています。
オフィス移転のメリット
会社の状況に応じたオフィス移転は、業績や従業員に様々なメリットをもたらします。
移転費用の削減
現在使用しているオフィスが、会社の規模や業務実態と合っていない場合があります。
また、リモートワークが浸透し、オフィスに出社しない社員の比率が多い場合、オフィスの坪数を最適化しないと維持費が無駄になってしまいます。
新しいオフィススペースに移転することで、より効率的なレイアウトや設備を採用し、オフィス維持にかかる費用を削減できます。
その結果、柔軟な働き方を実現でき、従業員のモチベーションの向上も期待できます。
採用強化による成長速度の加速
企業が成長するためには人材の確保が必要です。
業績が好調で人手が欲しい時に人材が集まらないと、さらなる成長が見込めません。
人材確保に向け、新しいオフィスの印象はとても重要です。
新卒採用の学生や求職者にとってオフィス外観よりも内装が重要視され、第一印象で働きやすい職場なのか決める傾向にあります。
他社との差別化を図る上でも、オフィス移転は快適な執務スペースや休憩スペースの確保など快適な環境を作ることができ、優秀な人材が集まりやすくなります。
快適な労働環境や新しい機会の提供は、社員の定着率にも貢献します。
企業ブランディング
企業ブランディングとは、企業が顧客や取引先、一般消費者、株主、地域社会、社員といった様々なステークホルダーに対して、共有したい企業の社会的イメージを戦略的に高める経営手法です。
オフィスの印象は企業の社会的イメージに強く作用するため、取引先が初めてオフィスを訪問する際に企業の印象が形作られるため、新しい市場やビジネス機会を開拓しやすくなります。
オフィス移転のタスクチームの立ち上げ【総務部】
オフィス移転は様々な手間や労力を要します。
そのため、総務部や人事部が主体となって、オフィス移転のタスクチームを立ち上げる必要があります。
オフィス移転の検討を始めた段階で総務部(課や係も含む)を中心とした専門チームを立ち上げましょう。
可能であれば、専門チームに社内調整を担うために各部署から1人以上を参加させることで現事務所での業務に差し支えることなくオフィス移転も円滑に進められます。
移転スケジュールの策定
オフィス移転のスケジュールを策定する場合、少なくとも6ヵ月前からスケジュール策定が必要です。
本記事では、株式会社IPPOが提供している「オフィス移転マニュアル(完全ガイド)」から一部抜粋してご紹介します。
オフィスレイアウトの検討
オフィス移転で重要な作業がオフィスレイアウトです。
採用計画に則った従業員の増加に伴ったレイアウトや、テレワークに対応したレイアウト(最適化による縮小)など移転予算を考慮してオフィスレイアウトを決定します。
- 従業員の要望を反映
- 各部署の所属人数に応じたゾーニング
- 福利厚生関連スペースの広さと打ち合わせスペースの度合い
レイアウトをどのように配置するかによって、社員が希望する働き方が左右されます。
オフィス移転の検討が始まる前からヒアリングを実施して、レイアウトの検討材料を集めておきましょう。
オフィスの内装決定では、オフィスに対する社員の不満や課題を解決するため、ヒアリングを通じて、内装やレイアウトをイメージすることが大切です。
最適なレイアウトを決めるためには、「まずオフィスに何が必要か?」「企業イメージやブランディングはどうするか?」を踏まえて、社風や事業成長に必要な内装や什器を決めていく必要があります。
ハイッテ by 株式会社IPPOが監修した、内装会社との打ち合わせでも使えるレイアウトプランシートを無料ダウンロードいただけます。
オフィス家具(什器)の準備
移転先の新事務所でオフィス家具(什器)を用意しましょう。
可能な限り、現事務所で使用しているオフィス家具を流用するとコスト削減にもつながります。
しかし、数十年使用したオフィス家具(劣化)やレイアウト変更によってオフィスの広さに対応できない場合は、オフィス家具の廃棄(処分費用が必要)や追加購入の対応が必要です。
移転先を内覧した上で、予算を考慮しつつ必要最低限のオフィス家具(什器)を準備しましょう。
オフィス移転の最低3ヵ月以上前には準備しておくことがおすすめです。
オフィス移転仲介・内装会社の選定
オフィス移転の場合、テナントとオーナーが直接やり取りすることも可能ですが、オフィス移転仲介業者は、移転に関するノウハウや実績が豊富で退去時や入居時に発生するオーナーとの交渉代行や、自社の経営戦略に応じたオフィスレイアウトや移転先を紹介してくれます。
その他、物件の検索や内覧の手配、契約書の作成、賃貸保証契約の手続き、賃料交渉の代行も行ってくれます。
オフィス移転仲介業者の中には、特定の地域に特化した仲介業者やベンチャー企業やスタートアップ企業に特化した仲介業者など様々です。
自社の規模や希望に応じたプロのオフィス移転仲介業者を選びましょう。
また、オフィス移転仲介業者や内装会社の選定では、数社に見積りを取り、移転に関わる費用や手数料が適正かどうかの確認がおすすめです。
希望通りのレイアウトやデザイン、立地、家賃など予算や経営戦略に応じた提案があるか、見積り費用に見合った提案になっているかも合わせて確認しましょう。
オフィス移転の目的や理由に沿うように、最低でも4ヵ月以上前にはオフィス移転仲介業者や内装会社を選定しましょう。
取引先への連絡や社内周知
オフィス移転をする旨を取引先に連絡します。
連絡方法はメールなどのビジネス文書で記します。移転先(移転予定地)の地図も併せて連絡しましょう。
また、移転を迅速に進めるためにも従業員に移転に必要な業務やスケジュールも事前に周知しましょう。
オフィス移転は、スケジュール管理やタスクの整理、公的機関への届出、内装工事の手配などやるべきことがたくさんです。
移転までのスケジュールが短い時こそ、チェックリストを使って、抜け漏れを防ぎましょう。
オフィス・事務所の移転を多数手がけけてきた、株式会社IPPOが失敗しやすい重要項目を抜粋!ぜひご参考ください。
※東京都心内でオフィス・事務所移転を検討されている方限定となります。
※東京都以外での移転や飲食店舗、同業種(不動産関連)の方はダウンロードいただけないことがございます。ご了承ください。
オフィス移転の流れと必要なタスクを整理
オフィス移転の流れや必要なタスクを整理しましょう。
- 旧オフィスの解約
- 旧オフィスの原状回復
- レイアウトの作成、工事の手配
- オフィス家具・OA機器の選定と発注
- 引越しの手配
- マニュアルの整備
- 各種届出
オフィスの退去では、解約予告通知書をオーナーに提出し、解約手続きを取らないと原状回復工事を始められません。
解約手続き後に原状回復工事を行うことが民法で義務付けられているため、タスクを管理しつつ、原状回復工事と一緒に新オフィスへの移転準備も進める必要があります。
移転スケジュール連動したチェックリストを用意して、確実にオフィス移転を進めましょう。
ステップ1 退去手続き(解約)
オフィス賃貸借契約の解約、すなわち退去手続きは、原状回復工事期間も確保した上で進める必要があるため、余裕をもって6ヵ月以上前には行いましょう。
一般的な退去手続きは新オフィスの移転先が決まってから行うとスムーズなため、新しい移転先を選定しながら、ビル管理会社やオーナーに提出する解約通知書を準備しましょう。
旧オフィスで交わした賃貸借契約書の内容によって、解約通知書提出日が異なる場合があるため、退去手続き前に賃貸借契約書を確認しましょう。
ステップ2 新しいオフィス物件を探す
移転先となる新しいオフィス物件を探しましょう。
- オフィスの坪数(面積)
- 家賃の金額
- 立地
- 駐車場の有無
- オフィスビルの築年数
- 内覧でわかる設備の状態
オフィス移転は採用計画や労働環境の課題を解決するために行います。
「オフィス移転の目的・理由を解決できるか」を考えながら、オフィス物件を探しましょう。
オフィス物件の選定が難航するとスケジュールの遅延に繋がるため、オフィス仲介業者への相談がおすすめです。
ステップ3 相見積り・賃貸借契約の締結
オフィス移転仲介業者や内装会社、引越し業者など各専門会社に相見積りを依頼しましょう。
オフィス移転仲介会社に一括で見積りを依頼する場合、以下の要素が入っているかどうか確認してください。
原状回復工事費用 | 借主が借りていた物件を、契約開始時の状態に戻す費用(床や壁紙の張り替え、壁の塗装、設備の修理などが該当) |
引越し費用 | オフィス家具(什器)、従業員の荷物を搬出・搬入や運搬に関する費用 |
内装工事費用 | 内装の変更・改修や、新しいオフィスに合わせた内装の設置などにかかる費用(壁や天井のクロスや塗装、フロア材の敷設、電気配線や照明設備の設置、空調設備の設置などが該当) |
電話回線・インターネット工事費用 | 通信インフラの設備や設定にかかる費用(電話回線や光回線の配線、LANケーブルの引き回し、Wi-Fi環境の整備などが該当) |
OA機器の導入費用 | 新しいオフィスのレイアウトや広さ、設備環境に合わせたOA機器の選定や配置が必要(コピー機、電話機など) |
それぞれ見積りを提出してもらうことも可能ですが、オフィス移転を一括で引き受けてくれる場合、円滑にオフィス移転を進められるため、一括見積りがおすすめです。
次にオフィスを賃貸借契約する場合の見積りを出します。
以下の見積り項目を確認しましょう。
賃料 | 賃料の値段を確認し、必要に応じて交渉 また、賃料の支払い方法や滞納時の罰則も併せて確認 |
敷金(保証金)・礼金 | 敷金や礼金の額、敷金の返還時期や条件を確認 |
維持費用 | 管理費や共益費、光熱費、駐車場代など別途費用 |
移転先のオフィス物件が決まったら、賃貸借契約を締結します。締結の際は以下の項目を確認しましょう。
契約期間 | 契約期間を確認し、必要に応じて交渉することが重要です。 また、更新時の条件や期間についても確認しておきましょう。 |
更新時の条件 | 更新時における家賃改定の条件や方法、また更新時の修繕費用や更新料について確認しておくことが重要です。 |
解約に関する条件 | 解約に際しての手数料や期限、契約解除に関する規定について確認しておくことが重要です。 |
賃借人の変更 | 将来的に、賃借人が変更される可能性がある場合には、契約書に変更方法について規定されていることを確認しておくことが重要です。 |
特約事項 | 賃借人と貸主が合意した特別な事項について契約書に明記されているか、確認しておくことが重要です。 |
礼金は必須ではないものの、個人オーナーの物件にテナントとして入居する場合は必要となることがあります。仲介手数料を支払う場合、上限は毎月の賃料1ヵ月分です。
中には仲介手数料ゼロで請け負うオフィス仲介業者もいますが、サポート内容を確認した上で選定しましょう。
見積りを提出してもらう場合、費用が増えることを想定して、予算策定することがおすすめです。
ステップ4 各種届出の提出
オフィス移転後には、法令で定められている各種届出の提出が必要です。
各届出で提出期限が異なります。
労働基準監督署・ハローワーク
労働基準監督署で労働保険名称・所在地等変更届を移転後10日以内に、ハローワークでは雇用保険事業主事業所各種変更届を同様に10日以内に提出します。
法務局
本店移転登記申請書を移転後2週間以内にもしくは支店移転登記申請書を3週間以内に提出します。
税務署
税務署には以下の2種類の届出を提出します。
- 異動届出書
- 給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書(移転後1ヵ月以内)
移転先の役場・役所および都道府県税事務所で事業開始等申告書を移転後速やかに提出しなければなりません。
移転先の役場や役所では異動届出書や法人・事務所等異動届、場合によっては特別徴収義務者所在地等変更届出書の提出や定款変更が必要です。
各種届出を1つでも怠ると通常業務に影響が出る恐れがあります。提出漏れがないようタスクを確認しながら進めましょう。
オフィス探しや退去サポートはハイッテまでご相談ください
ハイッテ by 株式会社IPPO(イッポ)では、スタートアップ・ベンチャー企業から100坪以上の中堅企業のオフィス移転もおこなっております。
お客様の経営課題や今後の事業戦略、採用計画に最適なレイアウトをご提案し、オフィス移転のサポートをご提案いたします。
お気軽にご相談ください。
監修者
株式会社IPPO 共同創業者 取締役 大隅識文
宅地建物取引士【東京都知事:第237969号】
中央大学卒業後、マスメディア向け制作会社に入社し経営にも携わる。その後不動産仲介会社に転職し、共同創業者として2018年株式会社IPPO(イッポ)を設立。シード・アーリー期のスタートアップ企業から上場企業までオフィス移転取引社数は500社以上、うち居抜きオフィス移転の取引実績は200社以上に達する。オーナーとの関係性も非常に良く、居抜きオフィス移転の実務を知り尽くした、きめ細かなサポートに、オーナー・顧客からの信頼も厚く、リピートが絶えない。