賃貸オフィス物件や事務所を退去する際に多くの場合で発生する義務が「原状回復」です。
原状回復工事とは、入居時の状態(原状)に戻すための工事です。
本記事では原状回復にまつわる基本的な部分から費用を抑えるポイントなど解説しています。
この記事の目次
原状回復工事とは
原状回復とは、借主(テナント)が賃貸借契約を終了し賃借オフィス物件を貸主(オーナー)に明け渡す際、借りた時の状態に戻す(=原状復帰する)ことです。
室内の雰囲気を明るくするための床や天井などの造作や、エントランスや会議室を作るための間仕切りなどは、退去時に全てを元の状態に戻さなければなりません。
原状回復の項目はオフィス物件や賃貸借契約によって異なるため、事前に賃貸借契約書を確認しましょう。
原状回復の定義
原状回復とは、借主(テナント)が賃貸オフィス・事務所を退去し貸主(オーナー)に明け渡す際に、貸主(オーナー)が定める元の状態に戻すことです。
第六百二十一条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
民法第621条 │ e-Gov法令検索
原状回復工事を実施するタイミング
賃貸オフィス・事務所の場合、解約通知を出した後、残りの契約期間中に原状回復工事を終わらせてから明け渡しとなります。
解約通知を出してから明け渡しまで3〜6ヶ月ほどしか期間がないため、先の予定を鑑みて早めの手配や引越しが必要です。
万が一、オフィス・事務所の契約期間満了までに原状回復が完了できない場合は、工事が完了し貸主(オーナー)に明け渡すまでに発生する賃料を支払わなければいけないため、注意しましょう。
原状回復に必要な期間
原状回復工事に必要な期間はオフィス・事務所の規模によって大きく異なりますが、工事範囲の調整から施工業者へ発注するまでに1〜2ヶ月を要します。
原状回復工事は30〜50坪前後の場合は2週間程度、100坪以上の場合は1ヶ月を要することも珍しくありません。
また、内装業者によっては依頼後すぐに着工できない場合もあるため、オフィス移転が決まり次第スケジュールを逆算し、早めに相談しましょう。
また、騒音や振動、エレベータの使用制限により別フロアから苦情が入る可能性があります。
工事の作業時間が夜間や土日祝日などの週末に限定される場合があります。
さらに年末年始やお盆などは工事業者がお休みになることもあるため、スケジュールを立てる段階でビル・工事業者に確認を行い、工事の日程を組みましょう。
原状回復に必要な費用
原状回復義務は借主(テナント)にあることから、発生する費用は借主(テナント)が負担します。
オフィス・事務所の原状回復に発生する費用は、大まかな相場感として100坪以下で坪単価4〜10万円、100坪以上で坪単価10〜15万円です。
※坪数や内装によって、原状回復費用は大きく異なるため、目安程度で考えておきましょう。
※坪数や内装によって、原状回復費用は大きく異なるため、目安程度で考えておきましょう。
原状回復工事を進める上で、貸主(オーナー)が内装業者が指定している場合がめずらしくありません
内装業者と工事範囲は、賃貸借契約書もしくは原状回復基準書に記載があります。
原状回復工事の項目
原状回復工事の内容が明記されている、原状回復基準書を確認しましょう。オフィス物件によって異なる場合があります。
- テナント内の間仕切りの撤去(ドアやガラスなども含む)
- 造作物の撤去
- 壁が壁紙の場合は全面張替
- 壁が塗装の場合は全面塗装
- 天井が壁紙の場合は全面張替
- 天井が塗装の場合は全面塗装
- 床板がタイルカーペットの場合は全面張替
- 床板がOAフロアの場合、高さ調整や破損は交換
- 巾木の全面張替え
- 扉及び枠の全面塗装
- 照明(配線も含む)の撤去、回復、清掃、管球(蛍光灯や電球)の交換
- 窓、ブラインドの回復、清掃
- 設備を移設や増設した場合は元に戻す(空調や火災報知器、スプリンクラーなど)
- 原状回復が終了した際のクリーニング、エアコンなどのクリーニングなど
契約書の内容によっては現地確認後、損傷箇所を修復してクリーニングのみ、損傷箇所がなければクリーニングのみの費用負担になる場合もあります。
貸主(オーナー)、契約書によって異なるため、必ず確認しましょう。
オフィス・事務所は床や壁、天井、照明、塗装などが借主(テナント)によって変更されることが多く、貸主(オーナー)にとってはリスクが大きいとされています。
そのため、どれだけ綺麗に使用していたとしても原状回復は必ずおこないます。
原状回復が必要となるオフィスについて
民法第621条で定められている通り、特約がない限り全ての賃貸オフィス物件で原状回復義務があります。
セットアップオフィスの場合
入居前の状態に戻すことを目的とする原状回復工事では、什器や設備が元々完備されているセットアップオフィスの場合でも、その他オフィス・事務所と同様に原状回復工事が必要です。
貸主(オーナー)で造作したものを除き、借主(テナント)が追加で造作を行った場合のみ、原状回復義務が発生するオフィスもあります。
退去時に「何をどのように戻すか」が原状回復基準書に記載されているため、内容を事前に把握しましょう。
追加造作や張り替えなどを行う場合は、オフィス移転仲介の経験が豊富である、ハイッテ by 株式会社IPPOにご相談ください。
居抜きオフィスの場合
前入居テナントの内装や什器をそのまま引き継ぐことが可能な居抜きオフィスの場合も、通常退去の場合、原状回復工事が必要です。
居抜きオフィスへの入居は、前入居テナントから内装・什器とともに、原状回復義務も引き継ぎます。
原状回復工事は内装造作を解体して、壁紙張替・鉄部塗装・タイルカーペット張替・管球交換・クリーニングをおこないますが、前入居テナントが大きく手を加えていた場合、原状回復費用が高騰する場合があります。
- ドアを交換していた
- 空調の増設や位置変更、電気容量を変更していた
- 照明器具を交換していた
- OAフロアを撤去していた
- 天井を一部または全部抜いていた
内装が施されているセットアップオフィスや、居抜きオフィス・事務所を検討する場合は退去時の原状回復費用も考慮してオフィスを選びましょう。
原状回復費用を削減するポイント
業者を指定されていたとしても、複数業者から相見積もりをとって価格交渉することもひとつです。
徹底的に清掃する
あらかじめ、できる範囲で隅々まで徹底的に掃除しておきましょう。
原状回復費用は、退去時に必須であるクリーニング代が含まれた金額となります。
原状回復工事の見積りをとる前に、綺麗な状態にしておくことがおすすめです。
不要な家具や什器は買取業者に依頼する
原状回復は貸主(オーナー)が定める状態に戻すことから、購入した家具や什器がある場合は移転先への搬入または不要な場合は廃棄しなくてはなりません。
退去する際、不要になった家具や什器は「買取業者に依頼する」「フリマサイトなどに出品する」など事前に対応しましょう。
原状回復工事時に排出される廃棄物は全て産業廃棄物扱いとなり処分に費用が掛かります。
賃貸借契約の締結時に貸主(オーナー)から、借主(テナント)へ造作買取請求権(建物に付加した造作を買い取ってもらえる権利)が付与されることがあります。
造作買取請求権は空調設備や電気・ガス、床と天井にレールが取り付けられたパーテーションなどが該当します。
造作買取請求権を行使した際の買取額は時価となるため、価値がないと判断された場合には請求は認められません。
造作物の削減
パーテーションや会議室を新しく造作した場合、造作買取請求権を行使しない限り原状回復工事での撤去が必要です。
必要な工数や期間が増えるにつれて原状回復費用も高額になるため、造作物が少ないほど原状回復工事が短期間で安価に済ますことができます。
居抜きで退去する
居抜き退去とは、内装や設備、家具、什器などをそのままにして退去することをいいます。
居抜きでオフィスを退去することで、次に入居するテナントに原状回復義務を引き継げ、原状回復費を削減できます。
居抜きで退去するためには、貸主(オーナー)の許可が必要です。
オフィス移転では、契約内容の把握に加えて、二重賃料などが発生しないようスケジュール調整が必要です。
株式会社IPPO(イッポ)では、オフィスの退去と入居を一貫してのサポートが可能です。
- 原状回復義務が免除
- SDGs(つくる責任、使う責任)への貢献
居抜きオフィス移転はハイッテにお任せください
ハイッテ by 株式会社IPPOは、スタートアップ・ベンチャー企業に特化した居抜きオフィス仲介に加え、豊富な知見とネットワークを活用した、居抜き退去サポートも行っております。
居抜きオフィスにご興味がある方はお気軽にご相談ください。
執筆者 ハイッテ編集部
株式会社IPPO全般のマーケティングを担っています。ハイッテの運用のほか、オフィス移転事例や賃料相場、オフィス調査なども行なっております。