VCインタビュー第4弾は日本最大級のベンチャーキャピタル、株式会社ジャフコの清田怜さんです。
1973年設立と歴史あるVCに新卒で入社したという清田さん。いつどんなタイミングでVCに入ろうと思ったのか、スタートアップへの思いなどをお聞きしました!
清田 怜(きよた さとし)
株式会社ジャフコ シニアアソシエイト
1991年生まれ兵庫県神戸市出身。立命館大学卒業。
2014年ジャフコ入社後、一貫してベンチャー投資業務に従事。投資候補先の発掘、投資実行、投資先の成長支援を一貫して行う。
趣味はお風呂(温泉ソムリエ、銭湯検定保有)。マイブームは筋トレ、サウナ
インタビュアー
株式会社IPPO 山岸 耕
yutori、ペイミー、AppBrewといったスタートアップのオフィス移転を創業期から手掛ける。
投資先には事業に集中してもらいたい
——清田さんの主な仕事内容について教えてください。
清田さん:主に行っているのは投資のフロント業務です。新しい投資先の開拓から投資検討、投資実行からその後のフォローまで、一貫して投資業務を行っています。
基本的には既存投資先との定例ミーティングで各数値の分析、足元の経営課題に関する議論をしています。
また新しい起業家の方々とお会いし、新規投資について具体的な検討が進んでいる時は、事業計画の精査や市場調査、競合優位性の整理等、投資検討業務を行ったりしています。
——お会いするスタートアップの新規と既存の割合はどのくらいなんですか?
清田さん:おおむね半々くらいです。投資先でも、新規投資検討先でも、実際に資金調達を実行する前後は頻繁にコミュニケーションを取ることが多いです。
——どんなことを話しているんですか?
清田さん:ファイナンスや事業に関することはもちろんなのですが、採用や組織の話から、営業での個社の攻め方についてなど、かなり具体的なテーマについて話をすることもあります。採用と事業を同時に進めていくのが大変で…など、経営者の限られたリソースをどこに投下すべきかという相談も受けます。
起業家には、事業を伸ばすことに何よりも優先してもらいたいので、事業成長のために一時的にではありますが採用やバックオフィス面を僕らの方でサポートさせていただくこともあります。
また、ジャフコのネットワークを使った企業紹介や、単なる紹介にとどまらず、投資先の会社の名刺を持って自ら営業に出ることもあります。
——え!?営業もやるんですか??
清田さん:やります笑
——それってVCでは当たり前のことなんですか?
清田さん:いえ、当たり前ではないと思います笑
なぜここまでやるかというと、ジャフコは戦略として厳選集中投資を行っているためです。1社1社に対してしっかりと関わり、僕たち担当者も手を動かして企業価値を高めるお手伝いをしていこうというスタンスでやっています。
ジャフコは採用支援チームや営業支援チームも擁していますので、そういったチームのメンバーと連携してサポートすることも多いです。
——投資先とは結構深く関わっているんですね。
清田さん:そうですね。大事な事業成長のスピードを上げるために我々に出来ることは可能な限りやっていきたいと思っています。
投資先と深く関わってみて思ったのは、当たり前ですが、教科書通りにはいかないなということですね。会社のステージや事業内容によっても課題は違いますし、とにかくベンチャーはスピードが命なので、先週のミーティングでの議題はとっくに解決していて、今週は全く別の課題が発生しているといったことは日常茶飯事です。全く同じ問題に出会うことはなく、本当に会社によって課題は様々だと思います。
僕らも全てができるわけではありませんが、長年の投資業務によってジャフコ内で蓄積してきた他社事例や過去事例などを参考に、会社の人が意思決定しやすいように整理しつつ、一緒に課題に向き合っていきます。
ジャフコについて
ジャフコ社内の素敵なフリースペース
——「厳選集中投資」がスタイルとのことですが、ジャフコについて教えてください。
清田さん:ファンド総額が大きいのもジャフコの特徴の一つです。昨年作ったファンドでは800億、その前のファンドは750億と大型ファンドをやっています。
また歴史で言うとジャフコは1973年に設立されており、他のベンチャーキャピタルに比べると長いです。培ってきたノウハウを活かし、日々ベンチャーと向き合っています。
ただ時代ごとにやり方は変わってきていて、現在は先ほどお話しした厳選集中投資というスタイルでファンドを運営しています。
ステージとしてはシリーズA前後が一番多いですが、特に限定しているわけではありませんし、業種業態についても絞っていません。
——あれ?ちょっとイメージと違いました!
清田さん:あ、そうなんですよ。ジャフコってお堅いイメージがあるみたいで、ミドル〜レイターのところばかりに投資していると思われがちなんですけど…
——ごめんなさい、そう思っていました
清田さん:ははは笑
実は全くそんなことはなくて、新規投資の場合には、シードステージ、アーリーステージの会社へ出資するケースが約9割です。現時点では全く売り上げがありませんという企業に出資させて頂くケースもあります。ちなみに投資社数は新規で年間約20社ほどです。
——大規模VCということで、メンバーが非常に多いですが、チームなどがあるんですか?
清田さん:投資のチームは大きく2つに分かれていて、一つはベンチャー投資、もう一つはバイアウト投資です。
ベンチャー投資はベンチャー全般を扱うチームに加えて、以下の2つの専門チームを持っています。
・大学発ベンチャーなどの産学連携チーム
・ライフサイエンスチーム(バイオチーム)
産学連携チームは、大学発ベンチャーなどを担当し、専門性の高い研究者の方と一緒に会社を設立する所からお手伝いしたり、出資をしたりしています。
ライフサイエンスチームも同様に専門性が高いため、製薬出身のメンバーなどを中心にこちらも特定のメンバーが対応しています。
それ以外のメンバーは業種や分野を限定せず、何でもやっています。
バイアウト投資は会社の成長性に着目したグロース型の投資や親会社・大企業からの独立支援やカーブアウトを行う投資を行っています。また、ベンチャー投資の知見を活かし、事業を新たに立ち上げるインキュベーション型のバイアウト投資も行っています。
「人」に惹かれます
——清田さん個人のことについてお聞きしたいのですが、得意領域などはありますか?
清田さん:僕の場合はあえて領域は絞っていなくてテクノロジードリブンな会社もあれば、BtoBのSaaS、toCビジネスも担当しています。
ファイナンスのタイミングに限らず、僕の場合は割と早いタイミングからコミュニケーションさせて頂くケースが多いです。面白そう!と思ったら会社ができたばかりのタイミングでもお声掛けし、継続的に議論させて頂き、変化率やスピードを見ています。
——サービスの情報収集はどのようにしているんですか?
清田さん:メディアから情報を得ることもありますが、ネットに落ちている情報は古くなっていることもあるので、実際に人とお会いして現場の生の声を参考にすることが多いです。僕自身も家に閉じこもっているのが向いてないタイプで、外に出て人とコミュニケーションを取る中でいろいろ情報を得るのが好きですね。1日中誰とも会わない日は作らないようにしています。
——今まで様々な企業に出資されてきたと思いますが、出資のエピソードを教えてください。
清田さん:株式会社Gaudiyという会社に出資していますが、ジャフコの中でもかなり早い段階かつ少額の出資でした。
出資当時、社長がまだ24歳と若い方だったのですが、お会いしたきっかけはエッジAIに関する勉強会です。周りが40~50歳くらいの方々ばかりな中で、Gaudiyの石川社長だけが若く、その割にズバズバと鋭い発言をしてて気になったんです。
その後、懇親の席で話をした時に「昔はAI系で事業を手掛けていたけど、これからは別の分野で新しいことを始めようとしています」と教えてくれました。事業構想を聞く中で、サービスの仮説が面白く、検証のために私がサポートできそうなことも多かったので、知人を紹介しつつ、一緒にサービスのブラッシュアップをしていきました。
こうした仮説検証プロセスの進め方やスピード感を間近に見ていく中で、石川さんに対する信頼感が高まり、シード段階ではありましたが出資させて頂きました。
その他ですと株式会社QuantumCoreはCAC主催のマンスリーピッチでプレゼンを見た時に「めちゃくちゃ面白そう!」と思って、とんとん拍子で話が進み、 2ヶ月程で出資させて頂きました。
——経営者と初めて会う時に心掛けていることとかありますか?
清田さん:一番は経営者の方をリスペクトすることです。
基本的には僕らが投資をするのは起業家やその会社ありきなので、その人が本当はどうしていきたいのかをしっかり聴くようにしています。
人も重要、サービスも重要、マーケット環境も重要でいろいろな要素が混ざり合ってはいるのですが、突き詰めていくとやっぱり人なのかなと思いますね。
どういう志でやっているんだろうかとか、上手くいかないことだらけだけど本気でやりきる力があるのか、周囲の人を巻き込めるのかなとか、いろいろな面からその人を見ています。
——今気になっている分野はありますか?
清田さん:DX(デジタルトランスフォーメーション)に注目しています。
コロナの影響で各業界が変わらなきゃと考えている中で、例えば店舗業や接客など今まで当たり前のように店員さんがいて接客をしてくれたものが非接触や自動化になったり、コストカットの対象になっていったり。少し前まではweb上での効率化が主流でしたが、リアルの場におけるDXも進むんだろうなと考えています。
また、アートやフェムテック、LGBTといったこれまであまりビジネスの文脈で語られてこなかった分野にも興味があります。それぞれのマーケットの状況や課題について、まだ詳細理解できていないのですが、とても関心があります。
起業家の目標を一緒に成し遂げたい
——キャピタリストになろうと思ったきっかけは何ですか?
清田さん:僕は新卒でVCに入社したのですが、大学時代にビジコンに友達と出ていたり、経営者の鞄持ちを行っていたりしました。そういう活動をやっている中で、特に大学内インキュベーション施設での起業家支援インターンの影響が一番大きかったです。起業家は「こういう思いでやっているんだ!世界を変えていくんだ!」という気持ちでやっているのを見ていて、彼らのビジョンを一緒に成し遂げたいと思うようになりました。そういう高い志を持った経営者を間近に見てきたからこそ、自分が安易に起業するというイメージは湧きませんでした。
そんな中でVCという仕事を知りました。
自身の惚れ込んだベンチャーに出資させて頂き、株主として同じ船に乗って企業の成長を後押しする。会社が上手くいかないとVCも利益が出ない、同じ方向を向いたビジネスである点に面白みを感じました。
探してみると新卒で募集しているのがジャフコで、ビジコンに一緒に出ていた友達が受けると言うのでついて行きました。
——まるでアイドルのオーディションみたいですね。
それで友達が落ちて自分だけが受かっちゃうとかありますよね笑
清田さん:そうそう、それなんです笑
——えええええ笑 次のキャリアって何か考えていますか?
清田さん:正直に言って、VCの仕事が面白いのであまり考えてはいないです。今はキャピタリストとしての成果を上げていきたいですね。
長い目で見ると、もしかしたら自分で何かやっているかもしれないし、変わらず投資し続けているのかもしれませんが、スタートアップが好きなので、立場は違えど、この界隈で何かをやっているのかな……とは思います。
——他社VCさんと交流とかあるのでしょうか?
清田さん:実は他のVCの方々と仲良くなりたいなとはずっと思っているんですが、そういうきっかけがなかなか無くて……。いろんな人と仲良くなりたいです!これを読んでいる皆さんよろしくお願いします笑
編集後記
清田さんとお話ししてみて率直に思ったのが、ジャフコのイメージが変わりました。深く起業家の方と関わり支援していく姿勢がとても印象的で、出資だけでなく企業を一緒に成長させていく第2のメンバーなのだと感じました。
VCという仕事について楽しそうにお話しする清田さんをみて、こちらもワクワクしました。
資金調達だけで無く、起業しようかなと悩んでいる方も、是非清田さんとお話ししてみてください!
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