VCインタビュー第3弾は、株式会社iSGSインベストメントワークスの安喜理紗さんです!
マーケティングの経験のある安喜さんの視点で、VC業務についてや投資判断について、さらに個人的に関心のあることなど沢山語っていただきました。
安喜 理紗(あき りさ)
株式会社iSGSインベストメントワークス インベストメント・マネージャー
2016年4月にユナイテッド株式会社に入社し、主力ソーシャルゲームの国内及び海外のマーケティング担当として、広告出稿、イベント運営、他社とのコラボレーション等に従事。2018年4月、ベンチャーユナイテッド株式会社に出向し、シード期以降のスタートアップ投資及び投資先の支援に携わる。2020年7月に株式会社iSGSインベストメントワークスに入社。前職の影響でゲームにはまり、一時期は自ら配信をしていたほどのゲーム通。
インタビュアー
株式会社IPPO 山岸 耕
yutori、ペイミー、AppBrewといったスタートアップのオフィス移転を創業期から手がけ、現在はハカドルの編集部も兼任。
真面目な印象をもたれるが、パチスロで生計を立てていたこともある見た目に出ないタイプの変人。
この記事の目次
オールジャンル・オールステージのファンド
——安喜さんの所属VCについて教えてください。
安喜さん:iSGSは2016年に設立された独立系のベンチャーキャピタルで、「人々の生活や企業活動に革新をもたらす」スタートアップに投資しています。
実績として、投資先の事業領域で一番多いのはIoT関連ですが、その次はHR系、シェアリング、Eコマースがあり、その他にもエンタメ、スポーツ系など、幅広い領域を扱っています。
投資先のステージでは、件数ベースでいうとアーリーステージが一番多いですが、ミドルステージ・レイターステージもかなりやっています。
4人いるメンバーそれぞれが得意とする分野が異なるので、どのような事業領域や成長ステージであっても起業家の力になれる、ということがiSGSの強さの一つなので、あえて事業領域や成長ステージを限定していません。
——領域やステージを限定していないと大変ではありませんか?
安喜さん:難しい部分もありますが、それ以上に自身の成長に繋がっていると感じます。例えばシードの企業とレイターの企業では投資判断において全く見る視点が違います。また、特にシード・アーリーステージの企業への投資では「次の成長ステージを投資対象とする投資家につないで資金調達を成功させる」ということがベンチャーキャピタルの重要な役割だと思うんですが、例えば自分自身がシリーズAの投資を理解していなければ、このステージを対象とする投資家に「良いパス」は出せないと思うんです。
事業についても同じで、事業会社に業務提携やM&Aを提案するにしても、提案先の事業領域について少しでも詳しいほうがいいですよね。こういう点でも同時に色々な領域やステージの投資を学び、経験できることはとても良い勉強ですし、こういう機会があるVCは中々ないと思うので、iSGSに入社して良かったなと思っています。
——iSGSとして出資する上で重視していることはありますか?
安喜さん:他のVCさんとはちょっと違うかもしれない視点としては、ダイバーシティ志向のスタートアップであってほしい、ということはメンバー同士で常々話しています。
データで言うと、意識的に女性起業家を選んでいたり、女性起業家に投資をしたいと言っているるわけでは全くないのですが、実はiSGSの投資先の約30%が女性経営者となっています。これは他のVCに比べても非常に多い割合となっています。
その理由として、日本初で、現在日本で唯一の女性ベンチャーキャピタルの代表パートナーである佐藤真希子の存在に加え、他のメンバーも女性をターゲットとしたマーケットへの理解があることが挙げられると思います。例えば、代表パートナーの1人である菅原は、株式会社アイスタイルのCFOとの兼務ですので、女性向けマーケットへの知見と関心がとても高いです。
日本はもちろん世界が、性別・人種・宗教などにとらわれず、挑戦したい人が挑戦できる環境になるよう、ダイバーシティへの取り組みを今後も推進していきたいです。
スタートアップは「仮説が命」
——安喜さんが個人的に気になっている業界はありますか?
安喜さん:全ての人がより長く元気に健康に生活できるようにヘルステック、フェムテックはずっと注目している領域です。おそらくVCの中で1番じゃないかと思っているんですが、オーガニックスキンケア商品とコスメが大好きで、ずっと自分でも使いながら情報収集しています。
あとは、ペット関連の領域ですね。私自身犬を飼っており動物が好きなので、1ユーザーとしても見ている領域です。
——どんな起業家の方とお会いしたいですか?
安喜さん:好きなのは、強い強いパッションを持って事業に取り組んでいる方ですね。自分がもともとやっていた仕事での経験や、起業家自身の過去の体験から、「もっと改善したい!もっとこうしていきたい!」という思いがある人に惹かれます。
——投資検討の際に、市場規模は気にしていますか?
安喜さん:現在の市場規模や将来的な市場規模は考える様にしています。
例えば大きな市場規模の場合、1社で独占は難しいとしても、その市場の中で1番になれそうかどうかや、1番になれなかった場合であっても、シェアを取り合うことのできる割合はどれくらいか、などはあらかじめ検討します。
——起業家と話す際に大事にしているスタンスはありますか?
安喜さん:やっぱりスタートアップって、大きな夢や思いを持って事業されている方が多いと思いますが、そのような思いと同時に「仮説が命」だと考えています。一度試してみて、だめだったら次はこれ…という繰り返しが必要で、もし仮説が弱ければ「どうしたらこういう世界にできると思いますか?」と宿題をお願いします。起業家の脳内には戦略があっても、その戦略を言語化してアウトプットできていない、ということが多いので、そこを意図的に引き出すことを意識して議論をしています。
——なるほど。マーケティングの経験がある安喜さんらしい考え方ですね。
安喜さん:そうですね。自分自身も一緒に考えつつ、起業家が考えている事を引き出すように心がけています。
あとは困ったときに相談されるVCでありたい、とも考えています。調子の良い時に応援するだけではなく、本当に困った時に「助けて下さい」と頼ってもらえることが理想ですね。
——確かに困った時に頼れる関係って重要ですよね。素晴らしいと思います!
安喜さん:ありがとうございます!とはいえ、私自身はまだ他のメンバーとは経験の差があるため、他のメンバーから投資先の事例の共有やアドバイスを積極的にもらっています。
また自分が投資していない定例ミーティングにもできるだけ参加したり、他ファンドのVCさんの話を聞きに行ったりして、勉強するようにしています。
iSGS流、メンバーの強みを活かす協力体制
——1日の働き方を教えてください。
安喜さん:基本業務としては、既存の投資先の定例への参加と、新規投資検討先のソーシングと面談がメインです。あとはファンドにご出資していただいているLPさんに、月1回投資先の状況や事業の進捗の状況を報告しているので、その部分の資料作成等をしています。
また弊社は担当制を設けていないので、参加できる人が定例に出て、定例に出られなかった人への情報共有は週1回必ず行っています。
——担当がいないって珍しいですよね。
安喜さん:担当制になると、投資先を支援するための知見や人脈が、その担当者が持つものに限定されてしまうことが考えられます。そのため、あえて担当制にせずにチームで取り組むことで、4人の力を合わせて、お互いの強みを上手く活かせるようにしています。
——4人の強みとは?
安喜さん:そうですね、それぞれが違う分野の強みを持っています。例えば五嶋はファイナンスが特に強いですね。契約書に関しても、基本弊社の契約書の雛形を全部作っているくらい得意なので、その部分は五嶋にお願いすることが多いです。
佐藤は元々サイバーエージェントで営業をやっていたのでその経験を活かし、投資先の営業に同行してアドバイスをしたりしています。また新規事業立ち上げの経験もありますから、採用面接に同席することもあります。
菅原に関しては、CFOとしての実績と経験が豊富なので、財務・管理面の実務やIPOの実務など、CFOを業務としてやっている人にしかわからない実務面のサポートができます。また海外事業に関してのインプットも圧倒的に強いと思います。
——皆さん守備範囲が良い意味で全然違いますね。
安喜さん:そうなんですよ。私でいうと、新卒でソーシャルゲームのマーケティングをやっていたので、その部分は他の人に比べて実務でできるというのが強みだと思います。
逆に、代表パートナー3人に共通しているのは、普通のサラリーマンからスタートして、膨大な実務経験を積んで、新規事業の立ち上げや投資・M&Aはもちろん、自らがマネジメントや経営者としての実績があることです。菅原や五嶋は海外での企業経営の経験まであります。
こういう事業の当事者としての豊富な経験が、iSGSの大きな強みだと思っています。
——社内で情報共有のために何か工夫していることはありますか?
安喜さん:全員が投資先のメッセンジャーに入っています。
普通は担当者と投資先のみが繋がっている場合が多いと思いますが、私たちは今70社超くらいの投資先があり、どこのトークにも全員入っていますね。なのでミーティングに出ていなくてもそこで情報のキャッチアップができるようにしています。
また社内で毎週金曜に定例ミーティングを設けています。特にトピックを定めているわけではなくて、個人の関心のある話題など結構雑談ベースで話しています。
今は直接会えない環境であっても、オンライン上で頻繁にコミュニケーションをとるようにしていて、普段から記事の共有をしあったり、日常的な雑談をしたりしていますね。
——安喜さんする情報収集のためのルーティンなどはありますか?
安喜さん:朝起きて30分くらいは情報収集の時間にあてていますね。私は結構朝が弱いので、その時間はスマホでニュースを見ながら脳を起こします(笑)
——私生活の部分での安喜さん独自のルーティンはありますか?
安喜さん:毎朝コーヒーを飲んでます。豆から挽いて入れるほど実はこだわっています。
あとは朝はよく散歩をしますね。犬の散歩がてら、出勤ルートとはあえて別のルートを散歩します。朝歩くと自分の切り替えになるので好きです。
VCとの出会いは偶然
——VCになったきっかけを教えて下さい。
安喜さん:もともとは人事異動がきっかけです。VCになるとは全く思っていませんでした。
私はユナイテッド株式会社に新卒で入社し、ソーシャルゲームのマーケティング担当としてずっと数字と向き合っていました。当初はソーシャルゲームについて全く知らないし、やったこともありませんでしたが、仕事がきっかけでゲームにハマってしまいました(笑)会社でも自宅でもずっとゲームをするようになって、一時期はゲーム配信をしていたこともあります(笑)
そうしてソーシャルゲームとマーケティングに没頭している時に、突然「2週間後からベンチャーユナイテッドに異動だよ」と言われ、全く意図せずいきなりVCの世界に足を踏み入れることになりました。
今考えると、前職の配属で私の人生はすごく動かされていますね(笑)ゲームにはまったり、未知だったVCの仕事に携わることになったり…。
でも今はVCはとても素敵な仕事だと感じているので、この仕事に出会えたことに感謝しています。
目標は最年少女性代表パートナー
——次のキャリアはどう考えていますか?
安喜さん:最年少で女性代表パートナーを取りたいです!女性で初のパートナーは弊社の佐藤がパイオニアなので、私は最年少を目指したいと思っています!
——仲の良いVCさんなどはいらっしゃいますか?
安喜さん:マネックスベンチャーズの和田さんは、お話していてとても勉強になることが多く尊敬しています。
East Venturesのハミルトンさん、グロービス・キャピタルパートナーズの山本さんとはよくご飯に行ってます!
あとは今年大和企業投資の仙石さんをリーダーとして発足したVC FES部にも参加させてもらっています。
VC FES部のメンバーもとても仲良しです!今年はコロナの影響もありフェスに参戦できませんが、オンラインでライブやフェスの中継やっているので、それをみんな家で一緒に見ながらチャットしてます(笑)
——気になっているVCさんはいますか?
安喜さん:VCではないですが清水建設さんが最近積極的に投資をしているので気になります。歴史あるスーパーゼネコンであり、ある意味スタートアップとは対極にいらっしゃるかと思っていたのですが、スタートアップ投資で投資家として登場されるようになって、どのような意図や目的、将来のビジョンを持って投資先を選ばれているのか、勉強していきたいと思っています。
あとは私が徳島出身なので、徳島の企業と繋がりを持ちたいです。地方を活発にする取り組みもしていけたら良いなと思っています。
——最後に、弊社がスタートアップのオフィス仲介をしているので、今まで訪問したことのあるオフィスで良いなと思ったところがあれば教えて下さい!
安喜さん:最近渋谷スクランブルスクエアのWeWorkさんに行ったのですが、とても良かったです!特に一人用の机とソファがあるフォンブースが沢山あって、オンラインミーティングの時に便利で良いなと思いました。
あとはミクシィさんも凄かったですね。受付から圧倒されました。
編集後記
領域を限定せずできるだけ沢山の企業と出会い、勉強したいという安喜さんの貪欲な姿勢がとても素敵でした。
メンバー同士が強みを生かし、全体に還元できる体制のiSGSでインプットを積み重ね、今後さらに成長していく安喜さんにこれからも目が離せません!
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