通常のオフィス移転と居抜きオフィス移転では、オフィス移転までの期間や契約の流れ、必要書類など様々な点が異なります。
本コラムでは、弁護士監修の元、居抜き移転の契約の流れや注意すべき点を紹介、解説します。
この記事の目次
居抜き契約とは
居抜き契約は、退去した前借主(テナント)の内装や造作、設備、什器・家具などを一部もしくは全て引き継いで契約して入居することです。
オフィスや事務所においても居抜き契約で入居することは可能です。通常のオフィス移転と比べて、初期費用や移転期間の短縮、原状回復費用や処分費用など退去費用をできるなどのメリットがあります。
居抜き契約では、賃貸借契約と造作譲渡契約の2つが必要です。
居抜きオフィスとセットアップオフィスとの違い
居抜きオフィスとは、前のテナントが使用していた内装や家具などをそのまま次のテナントに引き継ぎ、働く場所として必要な内装設備や備品などを残した状態で貸し出しているオフィス物件です。
一方で、セットアップオフィスとは、貸主が内装工事を行い、内装付きオフィスとして貸し出す形態のオフィスです。
受付や会議室などの間取り工事が行われており、パーテーションやデスク、チェアなどのオフィス家具が備え付けられているオフィスもあります。
居抜き契約の流れ
居抜きでオフィス・事務所を契約する際の流れを解説します。
①居抜きオフィスの内見と申し込み
エリアや坪単価、内装など移転先のオフィスの条件を定めたら、居抜き入居を募集しているオフィス物の内見をしましょう。
居抜きオフィスの場合、退去予定のテナントの契約期間中に内見することが多いため、三者間(オーナー、退去するテナント、入居を希望するテナント)のスケジュール調整が必要です。
居抜きオフィス物件の選定ができ次第、早めに担当仲介会社に相談をしましょう。
当日は、居抜きオフィス物件の管理会社の担当者が立ち会うことが多く、ほとんどの場合オフィス移転仲介会社と三者で内見を実施します。
居抜きオフィスは退去日が決まっており、立地や条件、什器の内容など条件が良い居抜き物件はすぐに応募が終了することがあります。
②ヒアリングと条件や内装、設備の確認
内見時はオフィスの造りや広さ、立地などの基本情報に加えて譲渡対象の設備や什器・家具などを確認しましょう。
退去予定のテナントに許可を貰って動作確認したり、購入日を確認しておくことで後のトラブル防止に役立ちます。
- カーペット
- パーテーション(間仕切り)
- ファミレス席
- フォンブース
- エアコン
- カウンター
- デスク・チェア
- ブラインド
- 書類棚
- 配線
譲り受けができない什器や設備も確認しましょう。
③貸主審査
選定したオフィス物件へ入居申込みをした後、貸主審査が入ります。
審査では、信用調査や財務状況の確認、業種や使用方法などが審査されます。財務状況は、過去や現在の収支を見るだけでなく、企業の将来性、連帯保証人の支払い能力など審査通過の判断基準は多岐に渡ります。
審査基準は貸主(オーナー)によって異なるため、多くの貸主(オーナー)と取引があるオフィス移転仲介業者を利用すると対策が可能です。
不動産を貸す人(貸主)が、借りる側の人物について、その経済力や人物像を主観的・客観的に判断する審査です。
※審査には、会社謄本や決算書、会社概要などが必要です。
④追加費用の確認
居抜き契約でも、追加で購入しなければならない什器・設備がある可能性があります。
会議室を追加する場合、会議室の造作費用に加えて、エアコンや消防設備、照明などの設備工事、床や壁など一部の変更、足りない什器・家具の購入などが必要です。
躯体(建物全体を構造的に支える骨組み)にまで及ぶエアコンや消防設備の工事には、貸主(オーナー)指定の業者がある場合が多いため、注意が必要です。
⑤造作譲渡契約の締結
居抜き契約の場合、譲渡品リスト付きの造作譲渡契約を締結する必要があります。
- 譲渡する什器と数量
- メーカー名や型番
- 購入時期
- 傷や汚れの状態
- リース品の有無
入居テナントは、譲渡できないものも確認し、譲渡品リストの備考欄に記載。トラブルを防止するためにも写真付きが望ましいといえます。
造作譲渡契約書には、原状回復義務の所在や引き渡し方法などを記載します。
また、造作譲渡の種類には、無償貸与、リース(サブリース)、造作買い取りの3種類があります。
造作譲渡の種類 | 契約内容 |
---|---|
無償貸与 | 退去するテナントが造作残置していくエアコン設備やキッチン設備を原状のままで賃貸契約を結ぶ契約 |
リース(サブリース) | オフィス家具などリース契約になっていて、退去テナントから入居テナントに転貸する契約 |
造作買い取り | 退去テナントが行った造作設備を買い取る契約 ※造作譲渡料は耐用年数から双方協議する |
オフィス・事務所の居抜きの場合、無償貸与が多いですが、有償希望の場合は、前もって共有・確認しましょう。
⑥賃貸借契約の締結
賃貸借契約書には、貸借する物件情報、契約条件、賃料の支払い方法などが記載されています。
契約と同時に原状回復についても詳細を確認します。
契約期間や使用目的、修繕についてなど必要な情報は重要事項説明書、賃貸借契約書、原状回復基準書に記載します。
また、契約締結時はサインと押印をする箇所が多数あるため、ゴム印を用意しておくと便利です。
※会社の印鑑証明書や連帯保証人住民票が必要です。
居抜き契約では、退去テナントと入居テナント間で締結する造作譲渡契約書と、入居テナントとオーナー間で締結する賃貸借契約書を両方締結する必要があります。
⑦居抜きオフィスの引き渡し
全て契約締結した後、居抜きオフィスの引渡しとなります。また、引渡しの前に様々な手続きを完了させる必要があります。
内装工事やインターネット回線などの設備工事は1〜2ヶ月以上時間を要する場合があるため、引渡し日が決定したらすぐに手配することをおすすめします。
居抜き契約での注意点
居抜きオフィス・事務所の契約について、注意しなければならないポイントを紹介しています。
契約不適任責任について
居抜き契約では、譲渡物が含まれており、内装が破損していた、設備や什器が故障していた、不足している美品がある(鍵がない等)といった故障やトラブルがあった場合、責任の所在をはっきりさせておかなければなりません。
契約にそぐわない不適合が発生した場合に「責任を明確にする」契約不適任責任を、事前に確認し、トラブル防止につなげましょう。
リース契約の確認
居抜き契約によるオフィス移転では、譲渡造作物が含まれており、さまざまな什器がそのまま利用できます。
一方で、リース契約がある設備が譲渡造作物の中に紛れていることもあります。リース契約と知らずに、リース料金の請求がくる、リース契約が満期を迎えて回収されるなどのトラブルが発生しやすいと言えます。
そのため、居抜き契約の際は設備やオフィス家具の状態のほか、リース契約の譲渡物がないかを十分に確認しましょう。
譲渡対象物は必ず書面に記載する(口頭はNG)
譲渡対象物は、個数や価格、状態を明記したリスト(譲渡リスト)を用意しましょう。
設備・什器などの残留物や内装の状態は主観によることが多く、退去テナントと入居テナントが感じる状態はさまざまです。
そのため、造作譲渡契約や賃貸借契約は必ず書面で締結しましょう。
居抜き契約では、退去テナントの原状回復義務が入居テナントに引き継がられます。そのため、賃貸借契約には原状回復の条件を明記しておきましょう。
最新の消防法を確認する
消防法は、定期的に改正されている法律のひとつです。
そのため、退去テナントが入居した当時は消防法に違反しなかった場合でも、改正後の消防法では違反になってしまうことがあります。
消防法の違反が発覚した場合、違反時点のテナント(借主)負担で工事が必要になり、追加費用が発生してしまう場合があります。
【参考】消防法施行令の一部を改正する政令の公布について │ 総務省消防庁
東京都のおすすめの居抜きオフィス
東京都のおすすめ居抜きオフィス・事務所をご紹介します。
東京都で、現在公開中のおすすめの居抜きオフィス物件です。
居抜きオフィスへの移転をご検討の方はご相談ください
ハイッテ by 株式会社IPPOでは、スタートアップ・ベンチャー企業を中心に、居抜きオフィスの仲介を行なっています。
東京都内の居抜きオフィス移転の豊富な知識と経験から、採用・事業拡大や新規進出を考えている方へオフィス移転コンサルティングを行っております。ぜひお気軽にご相談ください。
執筆者 ハイッテ編集部
株式会社IPPO全般のマーケティングを担っています。ハイッテの運用のほか、オフィス移転事例や賃料相場、オフィス調査なども行なっております。