テクノロジー領域のスタートアップを中心に支援するハンズイフ型ベンチャーキャピタルとして1999年に設立されたモバイル・インターネットキャピタル株式会社。今回はインベストメント・マネージャーの稲垣氏に同社の強みや業界についてのエピソードなどを伺いました。
モバイル・インターネットキャピタル株式会社
Investment Manager
稲垣 泰仁 氏
この記事の目次
モバイル・インターネットキャピタル株式会社について
特徴・強み
弊社は1999年に設立した独立系ベンチャーキャピタルです。私たちの投資理念は以下の2つです。
①Core Value
「目先のトレンドに左右されず、Core Valueを持つスタートアップへ投資します」
②Good Impact
「社会へGood Impactを与えるスタートアップへ投資します」
上記、投資理念を基にIT分野、及びITを活用している周辺分野へシード〜プレIPOまで幅広い投資ステージで投資をしています。その中でもプレシリーズA〜シリーズAの事業フェーズにてリード投資をし、IPOに向けて支援することが多いです。
支援のスタンスは基本的にはハンズイフ方式。月に1〜2回の定例ミーティングを実施し、経営陣の悩みを汲み上げて様々な視点から問いを投げかける形で伴走しています。経営陣の抱える悩みは事業のフェーズによって様々です。そのため、フェーズに合わせて短期的視点はもちろん、中長期視点も兼ね備えて、経営陣の目線を上げていけるよう意識しながらコミュニケーションを取っています。
投資先のターゲット
主な投資領域はIT・テクノロジー活用領域です。社名にもあるように1999年創業時からモバイルとインターネットの時代を牽引するスタートアップの挑戦を応援したいという想いで支援してきました。その上で、事業内容が社会課題の解決に寄与しているか、日本ひいては世界にインパクトを与えうるスタートアップかどうかを重視しています。
また、投資対象の事業フェーズについて、プレシリーズA〜シリーズAを中心としながら、シード及びシリーズB以降へとフェーズを拡張し、結果としてオールステージを対象としています。初回投資の金額は1〜3億円のレンジが多いです。初回投資後、IPOに向けて追加の資金調達ニーズがあれば、追加投資も積極的に検討しています。
投資する際のポイント
スタートアップのステージにより注目するポイントは変わりますが、基本的には経営陣の人柄、市場トレンド、事業内容の3つを軸として投資検討を行っています。特に、シリーズA以降においては、事業のPMF動向や事業計画を重点的に分析しています。
また、弊社は「人類の進歩に貢献する」を新たにビジョンとして掲げ、スタートアップへの支援を通じて人類の進歩へ貢献する活動をしていきたいという想いを持っています。そのため、投資先のスタートアップも人類の進歩へ貢献しうる社会的意義のある会社かどうかは慎重に見極めています。
直近だとBtoB受発注プラットフォーム「アイミツ」を運営する株式会社ユニラボへ投資をしました。「アイミツ」は、中小企業の受発注が非効率に行われている現状に目をつけたマッチングプラットフォームです。受発注プロセスにて生じるステークホルダーの課題を解消し、スムーズな商取引を促進することで、国内企業のBtoB商取引流動性を高められると感じ投資させていただきました。
1on1支援ツールをSaaSで提供している株式会社KAKEAIへはシードから支援しています。働き方改革や人材の流動化が進んでいる昨今の労働環境でマネジメント手法として1on1を取り入れる企業が非常に増えています。しかし、「本音が聞けない」「その場限りで連続性がない」など多くの課題があるのも事実です。それらの課題に対して1on1の価値を最大化するために開発されたツールです。これは従業員間コミュニケーションの活性化に寄与し、生産性の向上につながると考え投資をしました。
VC業界で働いている理由
私は元々「新しい価値が生まれる瞬間に携わり、その価値を出来るだけ多くの人に届けたい」という想いの元、株式会社博報堂に所属していました。そこでは、広告ブランディング業務を中心にブランドに関する市場調査や戦略立案、企画立案を通じて、ブランドのコミュニケーション改革やマーケティング改革、新規サービス開発業務に従事していました。また、メディア業務を扱うグループ会社へ出向した際はメディアタイアップ企画立案、コンテンツ開発、映画やイベント事業への出資を通じたコンテンツビジネス業務を行いました。
広告領域の立場から様々な事業会社の事業に触れるうちに、広告領域を越え、事業領域にもっと入り込めれば、当初抱いていた新しいかつ本質的な価値が生まれる瞬間により一層携われるのではないかという想いが強くなってきました。
そのような状況下で自身のキャリアを模索する中、ベンチャーキャピタルの存在を把握し、縁あって当業界にキャリアチェンジすることとなりました。スタートアップは自社の存在意義を自身で問い続け、周囲から問われ続ける活動体だと認識しており、それこそが、新しいかつ本質的な価値の創造活動であり、その活動に携われることに魅力を感じています。
投資後の付き合い方
濃淡はありますが、日頃のコミュニケーションの中で経営陣が見落としてしまいがちな経営課題の抜け漏れや経営陣が抱える悩みを拾い上げられるように意識しています。某スタートアップでは毎週定期的に訪問し、経営陣のみならず社内のメンバーともコミュニケーションを取るといったことも行っていました。そのような日々のコミュニケーションの中で、「いざという時に相談しやすい人」になれるよう日々努力しています。
投資先とのエピソード
個人的に印象的なエピソードは2つあります。
一つ目は先述した株式会社KAKEAIとのエピソードです。
前職時代、労働組合の中央執行委員に所属していたこともあり、大企業における上司部下間のコミュニケーションに対する課題感を感じていました。そんな中、スタートアップの情報で「上司と部下のコミュニケーションを円滑にするマネジメントツール」を提供している会社があるということを知り、”いつまでも人間力でカバーできるものではなく、そういうツールも必要にな時代だよな~”とぼんやりと感じていました。その後、モバイル・インターネットキャピタル株式会社へ入社し、自身の担当企業を見た際、株式会社KAKEAIがあり、”あ、この会社、前職時代に気になっていた会社だ!”と、個人的な運命の再会を果たしました。自身がユーザー側として必要性を感じていたプロダクトにVCとして携わる機会をいただけたことを嬉しく思います。VCの担当者として株式会社KAKEAIへ内情を聞くと社会的課題もあり、解決する意義があると改めて感じています。そのような話もあり、このプロダクトをより世界に広げたい!もっと多くの人に使ってほしいとも思っています。
二つ目は株式会社Buzzreachとのエピソードです。
株式会社Buzzreachは、治験の業務プロセスをDXし、国内新薬治験開発のアップデートを目指す企業です。
実は日本における治験は進捗が遅く、達成度合いが良くないという課題があります。そのため、新薬の世界規模での開発・承認を目指して企画される国際共同治験におけるアジア圏対象国としての地位が揺らぎ始めているのが現状です。仮にアジア対象国から除外された場合、日本における新薬の許認可タイミングが遅くなる、またはその新薬はに日本では使えなくなるという問題(ドラッグロス)が起きてしまいます。これらの課題に対して日本での治験をスムーズに運用できるようソリューションを提供しているのが株式会社Buzzreachです。
同社の事業構想は大変意義がある反面、開発難易度及び開発規模が大きいため、想定以上の開発コストがかかっていました。そんな中、当初想定の資金調達スケジュールの見直しが必要な事態が発生しました。その際、弊社をはじめ既存株主にてブリッジファイナンスとして追加投資をし、難局を打破し、万全の体制で次回ラウンドを迎えることが出来ました。世の中に対して大きな存在価値がある会社をファイナンス面で支えられたことはVCとして存在価値を感じた瞬間でした。
最近注目している業界
広義では業界全体を変革するDXには当然注目しています。加えてレガシーな業界だとより業界構造全体や業界特有の慣習へ与えるインパクトも大きいですね。
その中でも個人的にはマーケティング領域に注目をしています。私のバックグラウンドが広告業界で様々な企業のマーケティングに携わってきたという背景があり、関心が高い領域です。マーケティング領域内でも所謂アドテク領域というよりかはユーザーデータを利活用して効率的で効果的なコミュニケーションを可能にするソリューションなどを探しています。また、EdTech(エドテック)も個人的に興味がある分野です。私自身、親として子供がいることも関係していますが、これからの日本を強くするためには教育がとても大切であると考えています。そのため、これからの日本を強くすることに寄与する教育領域のスタートアップにも注目しています。
今後の展望
今後は資金調達時のみならず、日頃からスタートアップの人とディスカッションの機会を増やしたいと考えています。
新型コロナウイルスの自粛要請期間中は身動きが取りづらかったですが、自粛期間が明けてコミュニケーションが取りやすくなってきていると感じます。これからは資金調達ニーズの有無に関わらずスタートアップの経営陣と壁打ちという形式のディスカッションを積極的に行っていきたいです。ディスカッション等コミュニケーションを通じて、スタートアップの方に「人類の進歩に貢献する活動」をしてもらうため、我々ができることは積極的に取り組んでいきます。また、最近シード特化のファンドレイズを行いました。今まではプレシリーズA〜シリーズAがメインの投資対象でありましたが、今後はシード期のスタートアップにも積極的に投資をしていきたいと考えています。
興味があるもの
個人的には異文化に触れるために海外旅行などに関心があります。昔から自分と違う価値観の人と交流することが好きだったのですが、VCになり、さらに関心が強くなりました。VCとして様々な価値観や視点を持っていることは凄い価値になると考えています。毎日同じコミュニティで過ごし、同じ場所にいるとどうしても価値観が凝り固まってしまうと感じているため、意識的に枠の外に出ることを意識しています。余談ですが、個人的に夏が好きなためリゾート地などに惹かれています(笑)
編集後記
「人類の進歩に貢献する」を社内テーマとして掲げ、テクノロジー領域のスタートアップへ支援をしているモバイル・インターネットキャピタル株式会社の稲垣氏に話を伺いました。直近では、シード特化のファンド活動も始めるなど日本を強くするスタートアップへの関心がとても高いように感じました。稲垣氏の今後の活躍が楽しみです。
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