Code Republic共同代表でYJキャピタル所属の松山 馨太氏です。Code Republic・VC業界で働く理由や日々の業務、そして採択を行う際に重要視しているポイントなどを詳しく聞いてみました。
松山 馨太(まつやま けいた)
早稲田大学大学院卒。ヤフー株式会社入社後、株式会社GYAOへ出向、ネットワーク推進室室長、広告開発部部長としてパートナーとの事業開発、広告プロダクトの開発に従事。その後、地域課題の解決を目的として起業、キュレーションメディアやC2Cサービスを開発、2018年10月よりYJキャピタルに参画。
East Venturesと共同で運営するアクセラレータープログラムCode Republicの共同代表として、シード期のスタートアップ支援に注力している。
インタビュアー
株式会社IPPO 山岸 耕
yutori、ペイミー、AppBrewといったスタートアップのオフィス移転を創業期から手掛ける。
YJキャピタルでの業務の流れ
——業務の内容や流れを教えてください。
松山さん:基本的には起業家と会うということと、情報発信、採択企業のバリューアップの3つに向き合っているという感じです。
——起業家の方に会う頻度はどれぐらいでしょうか?
松山さん:新しい起業家で言えば1日1~2件ぐらいですかね。週に5~10社ほどお話を聞いています。既存の企業は週に6、7社ぐらいですね。
——代表をされているアクセラレーションプログラムの「Code Republic」に関してもお伺いさせてください。ターゲットはどのあたりになるのでしょうか?
松山さん:ターゲットはU30でインターネット領域で起業したい方をメインにしています。出資する際は起業経験やその方の人となりなどを踏まえて判断させていただいています。アイデア段階から開発段階にあるステージが中心ですね。20代の起業家にフォーカスしてるってところがあるんですが、その背景としては、30代以上の方が独立しようとなると、その方のほうが特定の分野において専門的な知見を持っていることが多いんです。そうなると私たちが提供する価値は知見ではなく、資金面のリソースを提供することの方が重要になると思っています。逆に学生をはじめ若者の場合、そもそものビジネス面などのノウハウを提供するという貢献もできると考え、Code Republicは若い層にターゲットしています。ある程度の経験値がある方であればYJキャピタルとしてサポートし、その前段階の方はCode Republicでサポートするといったイメージです。
Code Republicとは
Code RepublicはYJキャピタルとEast Venturesが共同運営する4ヶ月間のアクセラレータープログラム。シード期のスタートアップを対象として1社1名のキャピタリストが起業家のパートナーとして、4ヶ月間でのPMF(Product/Market Fit)、プログラム終了後のシリーズA達成を目指します。
——松山さんはどういった業務を?
松山さん:Code Republicのコミュニティ運営もありますが、情報発信も積極的に行っています。情報発信は起業初期に役立つ情報をSNSやYouTube・記事で発信しています。海外の資金調達情報やピッチ資料の作成におけるコツなど、起業アイデアの検討の際にヒントになる情報、起業初期につまづきやすい点をお伝えしています。
——採択する際に領域やtoC、toBなど絞っている基準などはありますか?
松山さん:基本的には「インターネットを駆使したビジネスであること」という絞り方でtoC、toB双方を対象にしています。テクノロジーを用いることによってスケーラビリティのある状態を目指すビジネスであれば全般という感じです。インターネット領域のサービスで、将来的にユニコーンや、日本を代表する起業を目指せる事業を考えている方に投資したいという想いはあります。
——青写真的な会社だとそこまで詰められていない場合もあるかと思います。そのような会社を採択される際はどのようにして選ばれるのでしょうか?
松山さん:一般的にはプロダクト、マーケット、チームの3軸で語られることが多いと思うのですが、特に重要視しているのはチームです。Code Republicの過去の採択企業を見ていても、多かれ少なかれピボットが発生します。プロダクトもマーケットも変化していくので、定量的にPDCAをずっと繰り返せる人であるかどうかは重視してるポイントになります。その人がスケーラビリティある会社を目指しているかどうか、PDCAを素早く回していける人なのかという2点はチームの部分で見ているところです。
——ピボットの可能性は確かにステージとしても多そうですね。プログラムの中でどのようにサポートをされているんでしょうか?
松山さん:2つありまして、1つ目は僕らの中でも領域調査している中で海外の成長企業やその成長要因をプールしています。海外では成長しているけど日本ではまだ誰も手付かずな状態なビジネスを紹介し、もし興味があればその情報や攻め方を提示して実践してもらうことはあります。
2つ目は検証のところですかね。みなさん検証しているんですが、1人でやっていると思い込みが入ってきてしまうんです。例えば、ネガティブな検証結果でも、自分のアイディアに思い入れが強いとポジティブに受け入れてしまう。僕も同じような経験をしてきました。そこで、検証結果を客観的に分析することを支援、最初のアイデアに限界があれば、次のアイデアに進んでいくことを促すということもあります。
——具体的にどのように検証をサポートされているのでしょうか?
松山さん:様々な事例を基に検証のステップを体系化しています。それは一般的な内容も含まれますが、シリーズAになった時にどのような状態を達成していればシリーズAの調達を得られるのか、などの定義もしています。YJキャピタルはシリーズA以降の投資が多く、East Venturesはシード期において圧倒的な実績を誇っています。両社が「この内容を満たしていたらシリーズAとして投資できるよね」という内容を定量的な数値、KPIまで落としています。それを一番最初に、「理想の状態はこのような状況と考えている」ということをお伝えし、ディスカッション、それを踏まえて「KPIは〇〇、仮設検証は〇〇というようにやっていく」という計画を立ててもらいます。他のシードVCもシリーズAからの逆算は行うと思うんですが、これらを踏まえて私たちは毎週の進捗をすりあわせてディスカッションしています。
その他にも同じフェーズの起業家でもチームによって調達の可否が別れることは少なくありません。
出資する側の情報をCode Republicは多く保有しているからこそ、その理由を伝え、資金調達への確度を上げられると考えています。
Code Republicのプログラムと特徴
——Code Republicについてより詳しく教えてください。
松山さん:書類審査、一次審査、二次審査、1ヶ月間のMVP検証期間を設けて、採択の流れで進んでいきます。審査の過程でもメンタリングと検証を行っています。プログラム全体の話をすると、1年に2回、4ヶ月間のプログラムを行います。最初の時点でプログラム後にシリーズA調達をするための理想の状態のディスカッションを行います。その後は毎週メンタリング。進捗管理を一緒に行いながら検証を行っていきます。そのメンタリングの中では仮説検証のためにインタビュー対象者や、ディスカッションできる会社を紹介したりもします。
あとは2週間に1回、ゲストを呼んで勉強会をしたりもしますね。VCの方や起業家の先輩の方を呼んでみたり、クローズドのコミュニティイベントを開催しています。そこには現在採択中に起業以外にも過去採択した起業も参加できるコミュニティとしても運営しています。4ヶ月のプログラム終了後は70名程のVC・CVCの方を招いて、ピッチをしてもらい、次回調達に繋げてもらっています。シードVCも企業によって異なると思いますが、資本政策も事業計画も作ったりするので、一緒に創業メンバーとして併走している感じですね。
実際のディスカッションの様子
——採択する企業の数は決まっているんでしょうか?
松山さん:それは決めていないんです。決まった採用枠がない分、基準は厳しいなと思うことはあります笑。過去の傾向で言うとだいたいは2〜4社採択していますね。「プロダクト、マーケット、チームであればチームを重視する」ということは先ほど言った通りなのですが、チームはすごくいいけど開発もインタビューもまだできてないとしたら、採択前に一ヶ月間ほどで「〇〇のトラクションをうめられますか?」「〇〇を仮説検証することってできますか?」というような課題を出し、達成できれていれば一ヶ月後に採択を決めるというようなケースもあります。
——採択から漏れてしまった企業はどのような点があれば前向きに検討できたのでしょうか?
松山さん:客観的に検証しているかどうかが挙げられます。僕らの中で「アイデアの構成要素」を決めています。アイデアの構成要素は大きく「誰のどんな課題をどう解決するのか?」「競合より選ばれる理由は?」「儲かるのか?」「スケールするのか?」と考えています。この視点がアイデア段階でしっかり考察されていればいいのですが、不足している場合は採択の判断が難しくなってしまいます。「何かしら客観的な検証結果が見えないアイデア」の場合、本当にやる気があったら検証行動を起こしていると思うんです。なのでそこも判断材料としています。最初の話に戻ってしまいますが、最初のアイデアで成功する例は極めて稀です。なので、手数とスピードで当たるものを見つけることが重要だと思うんです。一ヶ月で〇〇を仮設検証することってできますか?という期間の中でそれを進捗させられる人とさせられない人って差が現れるんです。中でも多いのがMVPを検証できるチームではないことですね。一番わかりやすいのはエンジニアがいないことだったり、非常に重い領域のためにインタビュー相手を見つけられなかったり。このようなMVP検証で体制が整っていないチームである場合はお断りすることが多いです。ですが人としては魅力的な人が多いので、定期的に連絡とってディスカッションを続けています。そこでの検証行動やトラクションを踏まえ、こちらから採択したい旨を伝えています。
——実際採択を終えて卒業した会社さんとの付き合いやサポートなどはどのようにされているんでしょうか?
松山さん:卒業後は2週に1回から月1回ぐらい定例ミーティングを行っています。そこでは次の調達に向けてどんなKPI目指すかを話したり、現在抱える課題のディスカッション、他VCの紹介を行っています。シリーズBに進んでいる企業でも月一回はミーティングをしています。
——今後の採択企業や注目している業界、企業などがあれば教えてください。
松山さん:サービス業のデジタル化は一番興味がある領域ですね。日本全体をみてもサービス業の規模は大きいですよね。例えば飲食店でも地方ではGoogleマップや食べログに登録してない企業がたくさんあります。このような地方のサービス業を集約、収益化を支援するようなサービスに可能性を感じています。現在は助成金やGoToキャンペーンなどで凌いでいる企業も今後コロナによる打撃が増加する可能性があると思っています。toCへサービスを提供していているが、裏側は中小企業への送客を行い、彼らを支援している、そんなサービスがまだ生まれていない領域が多く存在していると思います。
なぜYJキャピタルへ入社したのか
——YJキャピタルに入る前の経緯を教えてください。
松山さん:元々はヤフーに入社しました。その時から起業をしたかったんです。大学生の頃から起業に関しては興味がありました。僕は高校生の時にバンドをやっていたんですが、当時hip-hopが流行ってきてDJをやってみたいと思ったんですが、北海道の田舎だったのでターンテーブルは売ってないし、DJをやっている先輩もいないので、どうやってやったらいいのかわからなかったんです。大学に行った時に友達に聞いたらすぐ情報や人と出会うことができました。これがきっかけで地方と都市の情報やチャンスの格差がすごいあるなと思ったんです。Myspaceってサービスがあるんですが、そこで地方のアマチュアアーティストが音楽発表して人気になったりしていたんです。こんなサービス作ったら高校生の時の自分みたいな人がもっと活躍できるのかなと思ってサービスを作ろうと思いました。その時のネットサービスは広告収益モデルがメインだったので、広告とインターネットの会社に就職しようと思い様々な企業を受けたのですが、ヤフーがどのジャンルの広告モデルも勉強できるなと思い入社をしました。そこから広告営業として営業をしていたんです。併行してサービス作りたいなと思っていたので、それこそEast Venturesの衛藤バタラさんにもピッチしたことがあります笑仕事の多くを部下にお願いできる状態になった後に、地方への送客を目指す旅行系のキュレーションメディアを起業しました。メディア自体は順調に成長していたのですが、SEOに依存するモデルとなっており、キュレーションメディア自体への批判もあり、このサイトはクローズしました。
その後、観光体験のCtoCを作り始めたんです。「地元住民が街を案内する体験〇〇円」「釣り体験〇〇円」のような旅行体験のプラットフォーム、今で言うAirBnB Experienceのようなサービスです。体験を提供する方々は集められたのですが、ターゲットユーザーにMVPを提供したところ誰も使ってくれなかったんですね。それを見たときに「自分は何か失敗したんだな」と思って。自分は良いと思っても他の人はそうは思ってないなと。その時、日本で初めて独立系VCを創業された長谷川博和さんの本を読みました。本に書かれていた失敗例が自分との共通点を感じ、全然自分はできていなかったなと。
そこで長谷川さんと話してみたいと思い、調べたら早稲田大学ビジネススクールで教授をされており、そのまま入学、長谷川さんのゼミに入りました。長谷川さんとお話する中でVCを通じて多くの事業と接し、事業を学んでみたいと思い、YJキャピタルを志望したという流れです。
——すごい行動力ですね。そこからCode Republicができるまではどのような背景があったのでしょうか?
松山さん:Code Republic自体は私の入社前から存在していました。私がVCでの実体験を通じて知りたかったことは、創業初期にどのような検証をしているか?そして、どうすればスケールしていけるか?ということでした。その旨を弊社代表の堀に伝えたところ、Code Republicを担当させてもらうことになりました。
——起業経験があるからこそ、より俯瞰して起業を分析されようと思ったんですね!ちなみに……まだ起業への興味はあるんでしょうか?
松山さん:まだ起業に関しての熱量は捨てきれてませんね笑出資先の方には「共同創業者と同じ気持ちで思ってもらっていいから一緒に成長して行こう、その後自分も起業したいから困ってたら助けてね」ってことも言ったりします。みんなで頑張ってる集団になれたらいいなーって気持ちでいます。
——仲のいいVCさんを挙げるとしたらどなたでしょうか?
松山さん:East Venturesの方達はプログラムを一緒にやっていることもあり、仲がいいですね。その他にも早稲田大学院経営管理研究科の繋がりみたいなのがあって、その関係も仲がいいです。私個人ではCVCや企業の投資部門の繋がりの方が多いかもしれません。
——松山さん目線で最近気になってるVCさんなどはいますか?
松山さん:すごいなって思うのがCoral Capitalさんですね。VCは実績が出るまで時間がかかるのですが、投資実績がその人の評価に直結するのである種人気商売だと思っています。そんな中、本質的な支援に加え、プロモーションやコミュニティ運営でも成果を出している、その戦い方は見習うべきだし、尊敬している部分も多いです。あとはANRIやインキュベイトファンドの村田 祐介さんも尊敬しています。
——最後に印象に残っているスタートアップのオフィスや組織文化を教えてください!
松山さん:Baseconnectですかね。オフィスは京都にあります。一軒家を改造したオフィスで、普通に犬が走り回ってたり笑
アットホーム感に加えて、各フロアに大きいモニターがあって契約者数とか売上を全員に共有しているんです。残キャッシュまでも全メンバーにわかるようにしていて、全員が対等な立ち位置で一緒の事業を作り上げていこうというスタイルをオフィスで表現しているんです。
編集後記
今回からアクセラレータプログラムのインタビューをさせていただきました!インタビューでは書ききれませんでしたが、松山さんは起業家向けのyoutubeチャンネルもやられており、「マッハ松山」と聞いて「あ!」と思う人もいるのではないでしょうか。起業家を志す人たちにはぜひ見ていただきたい動画を多くあるのでぜひチェックしてみてください。
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株式会社IPPO(イッポ)ではオフィス移転を単なる「引っ越し」ではなく、企業価値を高める「重要なプロジェクト」のひとつと考えています。
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