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居抜き物件とは、既存の借主(テナント)が退去する際に内装や設備を残した状態で引き渡される物件です。そのため、居抜き物件での賃貸借契約書には特に注意が必要です。
トラブルを回避するためには居抜き移転に特化した仲介会社や宅地建物取引士にアドバイスを求めましょう。賃貸借契約書の確認にあたって専門家の意見を参考にすることで、トラブルを未然に防ぐことができます。本記事では、居抜きオフィス・事務所の賃貸借契約書での確認ポイントや注意点を宅地建物取引士監修の元、解説しています。
\居抜きオフィス・セットアップオフィス物件更新情報/
2023年8月は新宿区(8件)、目黒区(4件)、千代田区(16件)、渋谷区(5件)、文京区(0件)、中央区(13件)、品川区(4件)、港区(6件)、豊島区(0件)、東京その他(0件)で新着オフィス物件合計56件を公開されています!7月公開のオフィス物件は合計64件です。こちらも併せて、ご覧ください。
※()内は8月に追加された新着物件数です。随時、オフィス物件は追加されます。
※毎週更新【8月28日(月)更新】
居抜きオフィスの賃貸借契約書とは
賃貸借契約書は、オフィス・事務所を契約する際に必ず締結するもので、居抜きオフィスの場合は賃貸借契約書内に、テナント(借主)が内装や設備が既に施された状態でオフィススペースを賃借する旨や原状回復義務も継承される旨を特約などに記載されます。稀に賃貸借契約書内に居抜きに関する記載がない場合がありますが、契約書のドラフトを確認する際に後々のトラブル防止のため記載を依頼しましょう。居抜きオフィスを含む全てのオフィスの賃貸借契約書には、物件の原状回復義務や設備の使用条件、退去時の費用負担などが記載されています。また、契約期間や賃料、共益費、保証金などの基本的な項目も含まれており、契約を締結する前に十分な確認が必要です。
普通借家契約と定期借家契約の違い
賃貸借契約には、普通借家契約と定期借家契約の2種類があります。
普通借家契約は、契約期間を自由に定めることができ、正当な事由がない限り更新される契約形態です。ほとんどの賃貸借契約は普通借家契約で結ばれることが多く、契約期間は物件によって異なります。契約期間は1年以上とすることが定められていますが、オフィスビルの場合は2〜3年以上の契約期間が多いです。
定期借家契約とは、予め契約期間が定められており、期間満了により退去しなければならない契約形態です。定期借家制度では期間に定めはありませんが、契約期間を2〜3年とするケースが多いです。従来の借家契約では「正当な事由」がない限り、賃貸人は賃借人からの解約や契約の更新を拒むことができませんでした。しかし、2000年に施行された定期借家制度(定期建物賃貸借制度)により、契約内容で定めた期間を満了することで更新されることなく、賃貸借契約を終了することができるようになりました。
オフィスビルにおいては、定期借家契約が可能な物件の多くは取り壊し前のビルの場合が多いです。その理由は、数年後に取り壊し予定がある場合、取り壊しまでの期間しか入居できないため、普通借家契約ではなく定期借家契約が適用されているからです。定期借家契約の場合、契約時に重要事項説明として説明するだけでなく、別途定期借家契約の書類の用意の必要があります。その他、解約の1年前〜6ヶ月前までに賃貸人から賃借人へ解約の旨を通知する必要もあります。
普通借家契約と定期借家契約には、以下のメリットとデメリットがあります。
メリット | デメリット | |
普通借家契約 | ・解約予告に則って、中途解約ができる ・オーナーの契約更新拒否の正当な事由がない限り、契約更新ができる ・口頭での契約も可能 | ・賃料改定される場合がある ・特約により、中途解約に違約金がかかる場合がある ・更新時に契約更新料(賃料の1ヶ月が多い)がかかる |
定期借家契約 | ・通常よりも安い坪単価で借りることができるケースある ・取り壊し前の場合、原状回復免除で退去できる場合がある ・契約期間中に賃料改定されることがない | ・契約で定められた期間を伸ばすことはできない ・再契約ができない場合、退去する必要がある ・中途解約できないケースがある |
また、定期借家契約の物件の属性は大きく分けて3種類あります。
定期借家の物件の場合は下記のどれに該当するのかを予めチェックしておくことも大切です。
通常のオフィス物件 | 取り壊しの予定がないオフィス物件です。オーナーにより様々で更新できる場合とできない場合があります。 |
シェアオフィス | コワーキングスペースやレンタルオフィス、シェアオフィスなど内装が完成している状態で、いつでも入居できるスペースあります。このようなスペースは様々な企業が頻繁に出入りしており、更新できない場合もあります。 |
取り壊しが決まっているオフィス物件 | 今後取り壊しが決定していて契約終了後は更新できないオフィス物件です。この場合現状回復費用を支払わなくてよい場合があります。 |
【関連記事】オフィスの定期借家契約とは?メリット、デメリットを解説【宅建士監修】
造作譲渡契約書との違い
造作譲渡契約書とは、前のテナントが施した内装や設備を新しいテナントに引き渡す際に所有権の所在を明確にするために締結する契約書のことで、譲渡される内装や設備の価格、引き渡しの条件、受け取った内装・設備に対する所有権が新しいテナントに移ることが明記されています。賃貸借契約書とは締結する目的が異なるため、記載される内容も異なります。
また、造作譲渡契約書は賃貸借契約書とでは契約者も異なり、前のテナントと新しいテナントの間で締結されます。一方、賃貸借契約書は、貸主(オーナー)と新しい借主(テナント)の間で締結される契約書です。契約者が異なりますが、賃貸借契約書と同時に締結することでトラブル防止に繋がるため締結のタイミングに注意しましょう。
【関連記事】造作譲渡契約書とは?作成ポイントや注意点も解説
賃貸借契約書の確認ポイント(居抜きオフィス対応)
居抜きオフィスの賃貸借契約書を確認する際に注意すべきポイントは主に以下です。
- 賃借する対象物件
- 契約期間
- 賃料などの費用
- 貸主や管理会社の情報
- 原状回復基準の有無
居抜きオフィスでの賃貸借契約書では通常オフィスでも注意すべき点に加えて、前のテナントの内装や家具を引き継いだ状態で入居するため、「原状」の基準が明確にされているか確認することも大切です。トラブルを避けるためにも事前に把握しておきましょう。
賃借する対象物件
ほとんどの賃貸借契約書の最初にどのオフィス・事務所を賃借するか記載されています。対象物件の名称や所在地、構造、用途などが記載されています。この部分を間違われることは稀ですが、所在地の番地や建物の階数に誤りがないか確認しましょう。また、スタートアップ・ベンチャー企業の場合、マンションやSOHOをオフィス・事務所とすることがあり、その際に用途が「居住用」になっていないか注意します。居住用の場合は非課税、事業用・事務所の場合は課税の対象となり、毎月支払う賃料や敷金・保証金などに影響が出るだけでなく、会計処理も注意を払う必要があります。もちろん用途が居住用の場合でもオフィス・事務所として利用できる物件もあるため、不安な場合は仲介会社に相談しましょう。
契約期間
賃貸借契約の期間は、オフィス物件や条件によって異なります。一般的に、個人向けの賃貸物件では、普通借家契約で契約期間が2年間と定められていることが多いです。一方で、オフィス・事務所となる事業用の賃貸物件は、普通借家契約の他、定期借家契約も多数存在します。オフィス・事務所では、取り壊し前のビルや大手貸主(オーナー)の場合に定期借家契約を用いられることが多いです。
賃料などの費用
賃貸借における賃料や費用は、物件の立地や状態、契約内容によって大きく異なります。
初期費用 | 敷金、礼金、保証会社利用料、仲介手数料など |
契約中 | 管理費、共益費、光熱費など |
解約時 | 原状回復費用、クリーニング費用など |
賃料は、物件の広さや設備、立地条件などによって決まります。また、賃貸借契約の締結時には、敷金や保証金、礼金、保証会社利用料、仲介手数料などの初期費用が発生します。通常オフィスでは内装工事費用が発生しますが、内装付きの居抜きオフィス・事務所でも追加の内装・設備の改修工事を行う場合、費用が発生することがあります。賃貸借契約中に、管理費や共益費、光熱費などの維持費が発生します。これらの費用は、物件の規模や設備、管理状況によって異なります。賃貸借契約の解約・退去時には、原状回復費用や退去費用が発生します。これらの費用は、物件の状態や契約内容によって異なります。賃貸借契約書に原状回復基準や契約満了前の解約時の違約金など記載があるため確認しましょう。
貸主や管理会社の情報
契約を締結する前に、貸主(オーナー)や管理会社に関する情報を入念に確認することが重要です。物件の所有者である貸主(オーナー)や、物件を管理している会社の基本情報を理解しておくことで、今後トラブルが発生した場合でも適切に対応できます。
原状回復基準の有無
居抜きオフィス・事務所の賃貸借契約書で特に注意すべき点は、原状回復基準の有無です。居抜きオフィス・事務所の場合、既に内装やオフィス家具がある状態の区画に入居するため、どこからどこまでを前のテナントが造作し、どこからどこまでが元からあるものかわからない可能性があります。いざ退去するとなった際に原状回復基準が明確にされていないことで、想定外の原状回復費用を支払わなければならない可能性があるため、賃貸借契約書を締結する際に確認します。可能であれば、現テナントの原状回復の見積もりを取得しましょう。ただ、あくまで現時点での見積もりなので追加で工事した場合や退去する際には工事費用の相場が変わるので注意が必要です。
【関連記事】オフィスや事務所の原状回復工事とは?退去時の基礎知識や進め方、注意点を解説【宅建士監修】
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居抜き物件における賃貸借契約時の注意点
居抜き物件への移転は、前の借主(テナント)が使用していた設備や内装を引き継ぐことができるため、効率的かつコスト削減などのメリットがあります。しかし、居抜き物件において賃貸借契約を結ぶ際には、以下の点に注意してください。
まず、引き渡し時の物件の状態や設備の状況を明確にすることが重要です。これにより、後のトラブルを予防できます。次に、賃貸借契約書には、前テナントから引き継いだ設備や内装の譲渡に関する記載があるかどうかを確認しましょう。これにより、責任範囲や引き継ぎの条件の把握が可能です。
最後に、原状回復義務についても契約書で確認しておくことが重要です。退去時に設備や内装を元の状態に戻す必要があるかどうかをはっきりさせ、適切な対応ができるようにしておきましょう。
▼居抜き物件の賃貸借契約書:注意点まとめ▼
・引き渡し時の物件の状態や設備の状況を明確にする ・賃貸借契約書には、前テナントから引き継いだ設備や内装の譲渡に関する記載があるかどうかを確認 ・原状回復義務についても契約書で確認 |
造作譲渡契約書を別途用意する
居抜き物件の内装や設備をトラブルなく引き継ぐためには、造作譲渡契約書を別途作成することをおすすめします。賃貸借契約とは異なり、造作譲渡契約書は新借主(テナント)と旧借主(テナント)が締結し、内装の譲渡を行います。事前に確認事項や注意点を把握し、無事に引き渡しができるように、専門家や不動産会社と相談することが重要です。また、契約書の内容や費用、旧借主(テナント)が取得した原状回復工事の見積もりなどの詳細も事前に把握しておくことで、トラブルを防ぐことができます。
【関連記事】造作譲渡契約書とは?作成ポイントや注意点も解説
特記事項の内容を確認
居抜き物件の賃貸借契約を締結する際には、特記事項の内容を必ず確認しましょう。居抜き物件の場合、特記事項には、内装・オフィス家具が引き継がれる旨など、通常の賃貸借契約書には記載されない詳細が含まれています。
退去における条件や内容を確認する
賃貸借契約書には退去する際の条件も記載されています。契約期間満了での解約方法に加えて、契約期間満了前の解約や違約金など解約に際し重要な内容が記載されるため、入居時に退去・解約時の条件も確認しましょう。賃貸借契約書を締結した後に契約内容を覆すことは非常に難しいため、退去・解約時にトラブルにならないように事前に確認が必要です。
【関連記事】原状回復費用が高すぎる?対処方法を解説
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オフィス・事務所の居抜き退去はIPPOにお任せください
ハイッテ by 株式会社IPPOは、スタートアップ・ベンチャー企業に特化した居抜きオフィス仲介に加え、豊富な知見とネットワークを活用したオフィス移転の総合コンサルティングを展開しています。オフィス移転にまつわるお悩みやご相談をワンストップで解決に導きます。
- 居抜き移転を検討している
- どれくらい費用削減できるか知りたい
- オフィス移転が初めてのため、一から教えてほしい
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など、一つでも当てはまる方はお気軽にご相談ください。
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まとめ
居抜きオフィスを契約する際は、造作物件や居抜き物件に関する賃貸借の注意点や、会社としてどのような費用が必要かを確認することが重要です。特に、借主(テナント)として内装や設備を利用する場合や、譲渡に関する事項を確認しておくことが大切です。また、原状回復の責任も契約前にしっかりと確認しておくことで、後のトラブルを避けることができます。
【関連記事】オフィス賃貸借契約では連帯保証人は不要?法人契約の取り扱いや保証会社との違いを解説【宅地建物取引士監修】
営業担当者 / ハイッテ編集部監修者
代表取締役社長
関口秀人(sekigushi hideto)
宅地建物取引士【東京都知事:第101772号】
近畿大学卒業後、新卒で不動産仲介会社に入社。その後、不動産業界の経験を経て、株式会社IPPO(イッポ)を設立。主要大手デベロッパーとの契約を全て経験しており、何万坪でも対応可能。どの街に、どこが運営している、どんなビルがあるかを把握しており、まさに不動産生き地引といえる。また、不動産業界経験14年の中で、10年以上お付き合いのあるお客様も多く、顧客上場社数は20社以上、顧客EXIT社数は30社以上にのぼる。各企業の成長フェーズに合わせた課題とソリューションのノウハウがあり、関わったお客様は皆上がっていく傾向あり。
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