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賃貸オフィス物件や事務所を退去する際に多くの場合で発生するのが「原状回復工事」。原状回復工事とは、入居時の状態(原状)に戻すための工事のことです。この記事では原状回復にまつわる基本的な部分から費用を抑えるポイントなど解説しています。
【更新日】2023年4月24日
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原状回復工事とは
「原状回復」とは、借主(テナント)が賃貸借契約を終了し賃借オフィス物件を貸主(オーナー)に明け渡す際、借りた時の状態に戻す(=原状復帰する)ことを言います。室内の雰囲気を明るくするために行った床や天井などの造作工事、エントランスや会議室を作るために行った間仕切り工事など、退去する際はこれら全てを元の状態に戻す必要があります。原状回復の項目はオフィス物件や賃貸借契約によって異なるため、事前に契約書を確認しておきましょう。
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原状回復の定義
「原状回復」とは、借主(テナント)が賃貸オフィス・事務所を退去し貸主(オーナー)に明け渡す際に、貸主(オーナー)が定める元の状態に戻すことです。
(賃借人の原状回復義務)
第六百二十一条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
民法第621条 │ e-Gov法令検索
原状回復工事を実施するタイミング
賃貸オフィス・事務所の場合、解約通知を出した後、残りの契約期間中に原状回復工事を終わらせてから明け渡しとなります。解約通知を出してから明け渡しまで3〜6ヶ月ほどしか期間がないため、先の予定を鑑みて早めの手配や引越しが必要です。万が一、オフィス・事務所の契約期間満了までに原状回復が完了できない場合は、工事が完了し貸主(オーナー)に明け渡すまでに発生する賃料を支払わなければいけないので注意しましょう。
原状回復に必要な期間
原状回復工事に必要な期間はオフィス・事務所の規模によって大きく異なりますが、工事範囲の調整から施工業者へ発注するまでに1〜2ヶ月を要します。工事自体は30〜50坪前後の場合2週間程度、100坪以上の場合1ヶ月を要することも珍しくありません。
また、施工業者の対応できるキャパシティによっては依頼後すぐに着工できない場合もあるため、移転が決まり次第スケジュールを逆算し、早めに相談しましょう。
また、騒音や振動、エレベータの使用制限により別フロアから苦情が入る可能性があるため、工事の作業時間が夜間や土日祝日などの週末に限定される場合があります。さらに年末年始やお盆などは工事業者がお休みになることもあるため、スケジュールを立てる段階でビル・工事業者に確認を行い、工事の日程を組みましょう。
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原状回復に必要な費用
原状回復義務は借主(テナント)にあることから、発生する費用は借主(テナント)が負担します。オフィス・事務所の原状回復に発生する費用は、大まかな相場感として100坪以下で坪単価4〜10万円、100坪以上で坪単価10〜15万円です。しかし、この金額はあくまで相場で、坪数や内装によって、原状回復費用は大きく異なるため、目安程度で考えておくと良いでしょう。また、原状回復工事は多くが貸主(オーナー)指定の工事業者を利用しなければなりません。その場合も必ず相見積もりを早めにとって、費用を確認しましょう。工事業者と工事範囲については、「原状回復基準書」に記載があります。
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原状回復工事の項目
工事内容が明記されている「原状回復基準書」を確認しましょう。基本の項目は以下ですが、オフィス物件によって異なる場合があるため、契約書の確認が必要です。
- テナント内の間仕切りの撤去(ドアやガラスなども含む)
- 造作物の撤去
- 壁が壁紙の場合は全面張替
- 壁が塗装の場合は全面塗装
- 天井が壁紙の場合は全面張替
- 天井が塗装の場合は全面塗装
- 床板がタイルカーペットの場合は全面張替
- 床板がOAフロアの場合、高さ調整や破損は交換
- 巾木の全面張替え
- 扉及び枠の全面塗装
- 照明(配線も含む)の撤去、回復、清掃、管球(蛍光灯や電球)の交換
- 窓、ブラインドの回復、清掃
- 設備を移設や増設した場合は元に戻す(空調や火災報知器、スプリンクラーなど)
- 原状回復が終了した際のクリーニング、エアコンなどのクリーニングなど
契約書の内容によっては現地確認後、損傷箇所を修復してクリーニングのみ、損傷箇所がなければクリーニングのみの費用負担になる場合もあります。貸主(オーナー)、契約書によって異なるため、必ず確認しましょう。
住宅は通常消耗や経年劣化の場合、原状回復の義務がありませんが、オフィス・事務所の場合は床や壁、天井、照明、塗装などが借主(テナント)によって大きく変更されることが多く、貸主(オーナー)にとってはリスクが大きいため、どれだけ綺麗に使用していたとしても原状回復は必ず行います。
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原状回復が必要となるケース
民法第621条で定められている通り、特約がない限り全ての賃貸オフィス物件で原状回復義務があります。
セットアップオフィスの場合
入居前の状態に戻すことを目的とする原状回復工事では、什器や設備が元々完備されているセットアップオフィスの場合でも、その他オフィス・事務所と同様に原状回復工事が必要です。中には貸主(オーナー)側で造作したものを除き、借主(テナント)が追加で造作を行った場合のみ原状回復義務が発生するものがあります。
退去時に「何をどのように戻すか」が「原状回復基準書」に記載されているため、内容を事前に把握できます。トラブルの回避という意味でも、追加造作や張り替えなどを行う場合は、事前に仲介業者を通して管理会社や貸主(オーナー)に相談しましょう。
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居抜きオフィスの場合
前入居テナントの内装や什器をそのまま引き継ぐことが可能な居抜きオフィスに入居した場合も、通常退去を行う場合は原状回復工事が必要です。居抜きオフィスに入居する際に前入居テナントから内装・什器だけでなく、原状回復義務も譲渡されるためです。
原状回復工事は内装造作を解体して、壁紙張替・鉄部塗装・タイルカーペット張替・管球交換・クリーニングが一般的ですが、前入居テナントが大きく手を加えていた場合には費用が嵩む場合があります。よく挙げられるケースは以下の通りです。
- ドアを交換していた
- 空調の増設や位置変更、電気容量を変更していた
- 照明器具を交換していた
- OAフロアを撤去していた
- 天井を一部または全部抜いていた
内装が施されているセットアップオフィスや、居抜きオフィス・事務所を検討する場合は、退去時の原状回復費用も考慮してオフィス選びをしましょう。
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原状回復費用を削減するポイント
業者を指定されていたとしても、複数業者から相見積もりをとって価格交渉することもひとつです。
徹底的に清掃する
あらかじめ、できる範囲で隅々まで徹底的に掃除しておきましょう。原状回復費用は、退去時に必須であるクリーニング代が含まれた金額です。工事の見積りをとる前に、綺麗な状態にしておくことがおすすめです。
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不要な家具や什器は買取業者に依頼する
原状回復は貸主(オーナー)が定める状態に戻すことから、自身で購入した家具や什器がある場合は移転先への搬入または不要な場合は廃棄しなくてはいけません。退去する際、不要になった家具や什器などは、買取業者に依頼する、フリマサイトなどに出品するなど事前に対応しましょう。原状回復工事時に排出される廃棄物は全て産業廃棄物扱いとなり処分に費用が掛かるため、自身で対応できるものは事前に処分しておきましょう。
また、賃貸借契約の締結時に貸主(オーナー)に対し、建物に付加した造作(建物に取り付けられたもの)を買い取ってもらえる「造作買取請求権」が、借主(テナント)へ付与されます。造作買取請求権は空調設備や電気・ガス、床と天井にレールが取り付けられたパーテーションなどが該当します。ただし、権利を行使した際の買取額は時価となるため、価値がないと判断された場合には請求は認められません。
造作物の削減
入居時に無かったパーテーションや会議室などを新しく造作した場合には、「造作買取請求権」を行使しない限り原状回復工事での撤去が必要です。多くの場合、必要な工数や期間が増えるにつれて原状回復費用も高額になるため、造作物が少ないほど原状回復工事が短期間で安価に済ませられます。
居抜きで退去する
居抜き退去とは、内装や設備、家具、什器などをそのままにして退去することをいいます。居抜きで退去することによって、原状回復義務が次に入居するテナントに引き継がれるため、退去するテナントは原状回復費を削減することができます。居抜きで退去するためには、貸主(オーナー)の許可が必要です。通常の退去とは確認事項やフローが大きく異なるため、まずは仲介会社に相談しましょう。
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まとめ
原状回復工事は高額になるため、トラブルを回避するためにも正しい知識が必要です。スムーズに移転するためにも、少しでも不明点がある場合には、必ず仲介業者に確認をしましょう。
営業担当者 / ハイッテ編集部 監修者
取締役
大隅識文(osumi norifumi)
宅地建物取引士【東京都知事:第237969号】
中央大学卒業後、マスメディア向け制作会社に入社し経営にも携わる。その後不動産仲介会社に転職し、共同創業者として2018年IPPO(イッポ)を設立。ベンチャー企業が登壇する「Morning Pitch(モーニングピッチ)」の運営に長年携わる。2000社以上の繋がりからお客様同士をマッチングさせることも。シード・アーリー期のスタートアップ企業から上場企業まで移転取引社数は500社以上、うち居抜きのオフィス移転の取引実績は200社以上に達する。