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九州工業大学 戸畑キャンパス内に、2022年5月にオープンしたGYMLABOの米澤氏、土手氏にインタビューを実施。産学官の”交わり”の形成拠点となるGYMLABOがどのような取り組みを行い、今後どのような姿になるのか伺いました。
国立大学法人九州工業大学
先端研究・社会連携本部産学イノベーションセンター 研究戦略URA(上席高度専門職員)
若手工学アカデミー 代表
米澤 恵一朗 氏
国立大学法人九州工業大学
先端研究・社会連携本部 ソーシャルコミュニケーション課
社会連携企画係
土手 悠 氏
株式会社ATOMicaについて
GYMLABOは株式会社ATOMicaが提供するコワーキングスペース立ち上げ支援サービスの中で開発されました。GYMLABO立ち上げ後も同社が運営する施設やサービスとの連携を行っています。
GYMLABOについて
GYMLABOが九州工業大学の戸畑キャンパス内に設置されたのは、新たな体育館を作ることとなり、旧体育館の活用がなくなったことが背景です。活用されなくなって数年間眠った状態でしたが、九州工業大学の110周年記念事業として、OB・OGらの思い出が詰まった旧体育館をリノベーションして新たに活用しようということになりました。
本企画では、そもそも旧体育館を何に使うべきかの議論から始めました。キャンパス内にどんな施設が必要でそれをどのように活用するのか、2年ほどかけて議論しました。建設社会工学科のスタッフや関係する研究室の学生らと一緒に、アイデアを出すためのワークショップを開催したり、学内外の関係者にニーズヒアリングしたりして、どんな使い方をすべきかの検討に長い時間をかけましたね。
学生にはアイデアを出してもらうだけではなく、実際にリノベーションの作業をしてもらったり、各部屋のサインをデザインしてもらったりしたので、GYMLABOにはありとあらゆる学生の想いも詰まっています。
GYMLABOは「産学官の”交わり”の形成拠点へ」をコンセプトとしており、GYMLABOを通じて様々な交わりが生まれればと思っています。
大学は未来を創るための教育・研究活動をする場所で、その為のいろんなアイデアが交わる場所であり発信できる場所です。GYMLABOができたことにより、今までは個人の中に留められていた思いが、いろんな学科やコミュニティで共有されることで、一見関係なさそうなアイデア同士が結びついてこれまでにはなかった何かが生まれるのではないでしょうか。
まだオープンしたばかりのため、学生の利用がほとんどですが、企業からのお問い合わせも多数いただいており、シェアオフィススペースも10月から利用開始の予定です。そうなった時に学生と企業との交流から、何か新しいものが生まれるのではないかと思います。
企業が入居することで学生からのアイデアをビジネスに生かしたり、企業のアイデアを研究やインターン、授業のカリキュラムなどに組み込んで、それがビジネスとして成り立つのかテストするのもいいと思います。
敢えて「ここではこうしなさい」のような制限を利用者にかけるようなことをせずに、いろんなアイデアが出るようにしています。例えば、什器を自由に動かすのをOKとしたり、会議室の使い方も自由としています。先日ふと会議室を覗くと、みんなでアイドルのライブ映像を見ながら、真面目にホワイトボードを使って数式を解いているカオスなグループを発見しました。学生の行動から、多様な取り組みの可能性を色々発見する毎日です。
GYMLABOではできるだけ制限をかけずに自由な発想を基にした取り組みを可能とすることで、結果的にいろんな交わりが生まれると思っています。
コワーキングスペース
内装は、学生や利用する企業の方などが自由にアレンジできるように可動式のものにしたり、カラフルなものを起用しています。コワーキングスペースとしての利用を想定していますが、意外性を突いたオフィスっぽくない内装だと思います。
例えば、入口すぐにグランドピアノがありますが、何年も講堂に眠っていたピアノを再活用するために設置しました。一般の方も自由にピアノを演奏することができるストリートピアノ企画や、ピアノの音色を楽しみながら読書を楽しめる出張図書館など、ピアノにまつわる様々な企画を毎月開催することで、大学と地域をつなぐ架け橋になっています。(2022年7月14日)
他にもポニーの置物や学生が制作したスツール、絵画を見れるデジタルサイネージなど、ひらめきのきっかけになりそうなものを置いたりしています。
また、1階と2階を繋ぐジムラボステップスもうまく使いたかったため、クッションを設置しています。そこで学生はグループで作業をしたり雑談をすることもあれば、イベント時は観客スペースとしても活躍しています。
GYMLABOは小倉駅周辺のコワーキングスペースに比べるとアクセスが悪いので、短時間スポットでの利用は少ないと思っています。そのため、フォンブースを設置したり、ドリンクサービスを導入し、1日通して滞在できる工夫を進めていきます。学外の方が利用する場合は、KyuTechコラボの会員になることで、GYMLABOの会員資格を得られる仕組みになっています。法人の場合は年間50万円で何名でも利用できるようになります。また、非会員でもドロップイン利用が可能になっていますので気軽に利用してもらいたいです。
シェアオフィス・個室
シェアオフィスは企業向けのもので、ジムラボステップスを登った2階に3部屋設置されています。全て同じ内装ではアイデアが凝り固まってしまうので部屋ごとに内装を変えていますが、デスクやチェアは貸与されるので入居後すぐに稼働できると思います。シェアオフィスには、10月から企業に入居いただく予定で準備を進めています。
カンファレンスルーム・セミナールーム
カンファレンスルームは6〜8人までの目的別の会議室を6部屋用意しています。全部屋に大型モニターがあるため、ミーティング時も困らないと思います。各部屋でデザインが異なり、利用目的に合わせて選ぶこともできます。
セミナールームは約30〜50人収容できる部屋を2部屋用意しています。
シェアオフィスのための取り組み
シェアオフィスに入居した方と学生の活発な交わりが生まれるように、まずはGYMLABOに学生が自然と集まってくれるような様々な取り組みを行ってきました。その結果、延べ1万人を超える多くの学生にGYMLABOを利用してもらっています。
先日は、学生から、GYMLABOに来ることができない人のために「(仮称)バーチャルGYMLABO」を構築し、物理的距離の問題を解決したいと相談をもらいました。九州工業大学は飯塚市にもキャンパスがありますが、そこからGYMLABOに来るためには1時間ほどかかるため、すぐに来ることができない距離にあります。そのため、キャンパスが異なると気軽な交流ができないこともあったのですが、バーチャル空間によりキャンパス間の距離をなくし、いつでもどこでも交流ができるようになることを期待しています。
また、GYMLABOでは空間利用において、流動性が生まれるようにしているのですが、バーチャル空間では逆に「そこにいけばこの人がいる」のような空間が構築できるのではないかと思っています。企業にはバーチャルオフィスのような使い方もできるのではないでしょうか。そういった、技術起点の面白い発想が学生から出てくることも、学内にあるコワーキングスペースとしての特徴だと思います。
運営側としては、GYMLABOを利用する学生・企業全ての方に向けてアイデアのヒントになるようなものを散りばめていきたいと思っています。そのヒントのために現在、GYMLABO内にあるピアノやポニーもしかり、今後新たな什器や置物が増える可能性もあります。
大学は新しい技術や概念を作ることがあってもそれがビジネスにつながらないケースが多いのが課題です。そこでGYMLABOに入居する企業がそれらを新たなビジネスの種として使ってほしいですね。
GYMLABOを通じていろんなアイデアが生まれればと思っていますが、GYMLABOだけを使って何かを実現しようとは考えてはいません。キャンパス全体を使って、ありとあらゆる機能を実装していきたいですね。大学は教育研究機関でもあるのでクローズドな部分もありますが、GYMLABOは常にオープンな場であり続けます。オープンな交流をするならGYMLABO、クローズドな交流をするなら研究室などといった適材適所な使い方ができれば理想です。
これからのオフィスの在り方について
大学の授業も一部オンラインに切り替わりつつありますが、双方向で会話をするにはオンラインでは限界があります。ただ、一方向の授業やウェビナーはオンラインで地理的デメリットを排除した方がいいと思います。
オンラインやVRでまだ実現できないのは、空間に滞留している情報に触れることだと思っています。隣のグループで話していることが片耳で聞こえたり、周りが何をやっているのかの情報が自然と入ってくるのは、リアルならではです。そのような情報が新しいアイデアのもとになることや、新たな交流が生まれるきっかけになっているのではないでしょうか。
GYMLABOだけでなくオフィスは、今後は多様な人が交わる場所としての役割を実現していかないといけないと思っています。GYMLABOをいろんなアイデアの実現に向けた活動を制約なく取り組める場所にすることで、学生が社会と交わりながら、自分の描く将来・社会を思い描き、チャレンジできる場所となっていくと思います。
編集後記
GYM LABOの設立背景やどのような立ち位置なのか伺いました。ただのコワーキングスペースとしてだけでなく、学生・企業の新たなアイデアが生まれる場所にもなりそうです。様々なヒントが散りばめられているGYMLABOで仕事をすることで新たな発見があるかもしれません。
1日滞在できるように工夫がされているので、北九州市に行く際は立ち寄ってみるといいでしょう。
ハイッテ編集部からの一言
株式会社IPPO(イッポ)ではオフィス移転を単なる「引っ越し」ではなく、企業価値を高める「重要なプロジェクト」のひとつと考えています。
- 人員の採用計画をどうするか
- 企業ブランディングの向上をどのように行うか
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スタートアップ・ベンチャー企業のオフィス移転に強みを持ち、都心オフィス仲介実績1500件を誇る、オフィスマーケットを熟知した経験豊富なメンバーが、オフィス移転を円滑に進行するよう全力でサポートいたします。