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ビジネス2020.08.28ものつくりと薬事法
薬事法は昭和23年に公布され、昭和35年に現在の形に整備された法律です。
これの目的については以下の通りです。
===
この法律は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具の品質、
有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行うとともに、
医療上特にその必要性が高い医薬品及び医療用具の研究開発の
促進のために必要な措置を講ずることにより、
保健衛生の向上を図ることを目的とする。
===
すなわち、主に「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」「医療器具」の
4種について、安全性と体への有効性を確保するための法律です。
これには、前述の通り「有効性及び安全性の確保」を目的とした
規制に加え、これに該当する商品・該当しない商品の
広告表現の基準を示した”医薬品等適正広告基準”というものが
含まれておりまして、国(厚生労働省)によって、
「その商品及び原材料は安全で機能的に有効です」と承認した商品
でなければ、その効果効能を謳うことは出来ず、
承認を得たとしても表現の許容を超える誇大・誇張広告を行うことは
出来ません。
これに反すると、3(~7)年以下の懲役又は300(~500)万円以下の
罰金に科せられるだけでなく、それぞれの製造業許可
(医薬品製造業許可・医薬部外品製造業許可等)も剥奪される
可能性があります。
ですので、製造販売元はいわゆる『薬事チェック』に
細心の注意を払うわけです。
では次に、それぞれの住み分けを見てみましょう。
医薬品
文字通り、病院で医師が処方してくれるクスリや、
薬局・薬店で市販されている風邪薬や頭痛薬などが該当します。
配合されている有効成分の効果が認められており、
病気の治療や予防に使われるクスリを指します。
テレビCMなどでよく「用法・用量を守ってお使いください」と
言っているように、体に作用する有効成分が入っているため、
使う場合には使用方法を守るのが鉄則となります。
ネット通販でも一般医薬品の販売が許可される判決が下ったことは
記憶に新しいかと思います。
[主な該当商品]
・医師が処方する薬
・薬局で買える風邪薬、胃腸薬、目薬、滋養強壮剤などの市販薬
[各商品の申請・承認期間]
3年~
※投薬必要年月によるとされており、10年を超えるものもある
医薬部外品
医薬品ではないが、医薬品に準ずるものであり、
化粧品と医薬品の中間分類ともされます。
つまり効果・効能が認められた成分は配合されているが、
それは積極的に病気やケガなどを治すものではなく、
予防に重点を置かれたものとされ、対象となる物もはっきりと定められます。
また、効果そのものも誰にでも必ず認められるというものではなく、
効果が期待できるという範囲。
(「効果効能には個人差があります」といった表記があるようなもの)
この作用の違いが、医薬品との大きな違いです。
とはいうものの、微妙なポジションにあるという感覚は否めない。
ラベルなどにしても、医薬品は「効能・効果」が明確に表示されているのに対し、
医薬部外品の多くは単に「医薬部外品」とあるだけで、
配合された何の成分に、どんな効果が期待できると
認められているのかは不明な場合が多いのも事実です。
(昨今では、処方された成分の内、『有効成分』という括りで、
該当する成分を明記するのが一般的です)
また、”表示指定成分”として、アレルギーなどの皮膚障害を起こす
可能性のある成分名だけは表示が義務づけられており、
これだけでも消費者としては安心材料となります。
[主な該当商品]
薬用歯磨き剤、制汗スプレー、薬用クリーム、ベビーパウダー、
育毛剤、染毛剤、入浴剤、薬用化粧品、薬用石けん 等
[各商品の申請・承認期間]
約6か月~8か月
化粧品
2001年4月に大きく規制緩和されたのが化粧品です。
その主旨は、これまで個々の商品で必要だった厚生労働大臣の承認・許可を廃止し、
各メーカーがその責任において自由に化粧品を作って良いかわりに、
使った成分はすべて表示すること、というものです。
これにより、私たちユーザーはメーカーが開発した新しい化粧品を
従来より早く手にすることができるようになったのと同時に、
使われている成分をすべて知ることができるようになったわけです。
もちろん、各メーカーの責任で自由に作って良いと言っても、
どんな成分を配合しても良いというわけではなく、
配合可能成分が指定されていたり、配合禁止成分などがあり、
安全性は十分に重視されています。
[主な該当商品]
石けん、歯磨き剤、シャンプー、リンス、スキンケア用品、
メイクアップ用品 等
[各商品の申請・承認期間]
約1か月
いわずもがな、効果・効能における広告表現の裁量は
医薬品>医薬部外品>化粧品となります。
ちなみに食品の場合ですと、
(医薬品)>医薬部外品>特定保健用食品>栄養機能食品>
一般食品(前述の許認可を得ていない健康食品含む)となります。
医薬品・部外品が薬事法の範疇なのに対し、
特定保健用食品・栄養機能食品(これらをまとめて保健機能食品)は
健康増進法・食品衛生法の範疇にあたります。
これらの分類で大きく違いが生じる部分は何か整理しておくと、
次の様になります。
ですので、提供できる機能的価値が同じ商品だったとしても、
医薬品・医薬部外品・化粧品で、広告表現上は次のような差が生じます。
例)商品が『口中雑菌を99%殺菌できる歯磨き粉』とした場合
医薬品の場合
▲▲の作用で口中雑菌を99%殺菌!
医薬部外品の場合
有効成分○○配合。健康的な歯と暮らそう!
化粧品の場合
- ●配合。お口、キレイに。
※各分類で使用できる(使用しなければならない)原材料に
違いが出てきます。
もちろん中には、全ての分類で使用できる原材料も存在します。
但し、かならずしも医薬品や部外品の方が有利かと言うと、
そうでない場合も往々にしてあります。
例えば医薬品・部外品での許可申請期間のリードタイムを考えた場合、
消費者が化粧品でもその効果効能を安易に想起でき、
信頼するに足るような商品の場合は、市況が変わる前に、
化粧品として商品投下し、追って部外品に格上げしたりする場合もあります。
(あらいぐまがシンボルの手ピカジェルなんかも、
たしかこの類でしたし、一昔前の小林製薬の商品にも多かったように
記憶しています)
まず断っておくと、日用品や化粧品・化粧雑貨等のジャンルにおける機能性商品の場合、医薬品・部外品の承認を得て上市するに越したことはありません。
では、どういったケースであれば、化粧品や雑貨として 市場投下してもOKかと言うと、以下のようになります。
1)(成長期以降の)マーケットで先行商品が存在し、 “類似品”として認識される
2)商品に使用されている、素材や原材料の機能的特徴が周知である場合
3)web等で公開可能な、第三者機関による機能証明データがある場合 逆にそれぞれ相反する場合は、部外品承認を得た方が 賢明ということになります。
加えて、2)や3)の場合、特に導入期のマーケットにおいては、 後発商品が部外品承認を引っ提げて乗り込んでくることが想起できるだけに、 部外品承認の手続きを並行して走らせておく方がベターですし、 (小売相手でしたら)そうした事実がバイヤーを安心させ、 より協力体制を得られやすくなります。
医薬品・部外品取得のネックは②でも触れましたが、 コストと期間です。 商品によりますから一概には言えませんが、 例えば企画要件がまとまって、商品の体をなした 最終サンプルが企画開始から6か月程でアップされたとします。
その後定量試験→販売名届出→部外品申請→承認→部材制作 という流れになりますが、申請→承認に約6-8か月ですから、 定量試験から参りますと、10-12か月。
順当に進んでも、1年半以上の開発期間が必要というわです。
コストについても一概に言えませんが、毎製造時ごとに定量調査が必要となり、 @10万円~といった具合です。 機能性商品の場合、大手は十中八九部外品承認を前提に商品開発を進めます。
万が一先行されても、潤沢な広告予算や既存の販売網を武器に 巻き返す自信も実績もあるでしょうから、 半年・一年出遅れても広告表現の縛りをある程度取り払っていたおいた方が 自分たちにとっては有利であると考えるのも当然です。
逆にベンチャーや中小メーカーにとっては、 (無論この点だけではありませんが) 逆にこの”開発スタンスの違い”やスピード感を 競争力の一つとして捉えるべきだと思います。
IPPO中川